キャンピングカーの断熱と遮熱

 
 キャンピングカーの冷暖房を考えるとき、ボディを断熱加工することの重要性が、最近とみに認知されるようになってきたが、それと同時に、「遮熱」 という考え方も進めていかなければならない、というビルダーの社長さんがいる。
 RVランドの阿部和麿氏である。
 
 阿部さんがいうには、人間が体感する 「暑さ、寒さ」 の感覚は、 「遮熱」 によって左右されることが多いのだそうだ。
 「遮熱」 とは、文字通り 「熱を遮る」 ことをいい、正確には 「熱をはね返す」 ことを意味する。
 「断熱」 と違うのは、 「断熱」 が熱を受け止めて、その熱の伝導を遅らせるということを意味するならば、 「遮熱」 は、熱そのものをはね返してしまうことをいう。
 
 その 「遮熱」 が、なぜキャンピングカーの 「断熱」 と同時に重要になるかというと、それが、熱の移動量の一番多い 「輻射 (ふくしゃ) 」 を遮ることになるからだそうだ。
 理科に強い人ならば、この 「輻射」 という言葉で、すでにピンと来るかもしれない。 
 理系の勉強をサボってきた私には、以下の阿部社長の講義は、はじめて聞くものばかりだった。
 
阿部和麿代表  
 ▲ 阿部和麿氏
 
【阿部】 人間が 「暑い」 「寒い」 「冷たい」 と感じる温度や熱の伝わり方には、3種類あるんですね。
 その一つは、 「伝導」 です。
 氷などに触れると冷たく感じるのは、氷の温度が指先に伝導されるからです。火にかけたヤカンが熱くなるのも、伝導ですね。

 二つ目は 「対流」 です。
 部屋の中の温まった空気は比重が軽くなって上昇し、冷たい空気は下に回って、部屋全体がかき回されながら温かくなるというのは、この対流の効果が現れるからなんです。
 
 そして三つ目が、 「輻射」 です。
 これは赤外線などに代表される電磁波による熱のことで、太陽の熱の伝わり方を思い浮かべてもらえれば分りやすいと思うのですが、例えば、天気の良い冬の日など、太陽に当たった身体がポカポカと温かくなりますよね。
 それって、不思議だと思いませんか?
 なぜなら、別に空気そのものが熱くなっているわけではないからです。
 では、なぜ、外気温が人間の体温より低い冬の日でも、人間は太陽に当たると温かく感じるのか。
 それは、太陽の赤外線が、物体と衝突するときに熱を発生するという性質を持っているからなんですね。
 このような熱の伝わり方を 「輻射」 といいます。
 
 で、この 「伝導」 、 「対流」 、 「輻射」 という熱の伝わり方の中で、私たちが熱量の多寡を一番強く感じるのが、実は最後の 「輻射」 なんですね。
 
 人間の生活空間の中で、熱の移動量全体を100とすると、 「輻射」 がそのうちの75を占め、 「対流」 が20、 「伝導」 はわずか5だと言われています。
 キャンピングカーの冷暖房を考えるとき、 「遮熱」 という考え方が大事だと言ったのは、 「遮熱」 による対策が、熱の移動量の一番多い 「輻射」 を遮ることになるからです。
 
 では、具体的に、この 「遮熱」 という考え方は、キャンピングカーにどのように取り入れられているのかというと、…… 残念ながら、この世界ではまだ大きな成果としては実っていないんですね。
 というのは、この業界では 「遮熱」 に効果のある素材を導入するための研究もまだ途上であるし、またそのような素材があったとしても、コスト高が予想されるからなんです。
 
 では、その素材とは何か。
 研究によると、 「輻射」 による熱反射率の最も高いものは金属の銀 (シルバー) だといいます。
 その反射率を数値で表すと、99%に及びます。
 2番目は金 (ゴールド) で、その熱反射率は98%になります。
 
 ですから、金銀で外皮を構成したキャンピングカーがあったなら、さぞや夏は涼しく、冬は暖かいキャンピングカーになることでしょう。
 しかし、これは現実的ではありませんね。
 そのようなキャンピングカーは、一部の大金持ちでも敬遠してしまうでしょう。
 なぜなら、そのような 「走る宝石」 で旅行していれば、盗難や強奪の恐怖にいつも怯えていなければならなくなるからですね。
 
 幸いなことに、それほど高価でない素材として、私たちは 「アルミ」 という素材を持っています。
 アルミの熱反射率は91%だと言われますから、金銀に及ばないまでも、現実性はぐっと近づいてきます。
 
 では、キャンピングカーの外装をアルミで被えばいいかというと、そう簡単ではないんですね。
 まず、そのようなボディ技術があまり普及していないため、耐久性への配慮を含めてデータが不足していて、素材そのものも、現状ではコスト高になってしまいます。
 
 しかし、建築の世界において、遮熱材としてアルミ素材を上手に使う工法が普及しているといいますから、そのように住宅への浸透が進んだ段階で、キャンピングカーに適した使い方の研究も進んでくるでしょう。
 すでに、キャンピングカー以外の自動車においては、観光バスやトラックの一部で、屋根にアルミ的な効果をもたらす銀色の蒸着フィルムを貼ったり、銀色の塗装を施す試みも行われるようになってきました。
 
 また食品関係においても、このアルミ素材の遮熱性を利用した包装システムが普及してきました。
 コンビニなどで売られているスナック菓子の袋などを見ますと、その大半が、内側にアルミ箔を蒸着した素材を使用して、赤外線などをカットし、品物の劣化を防ぐようになっています。
 
 このような応用技術がキャンピングカーに採り入れられるようになるには、まだもう少し時間がかかるでしょうけれど、実は、すでにユーザーさんたちは実行しているんですね。
 たとえば、キャンピングカーでは、室内を外気温の変化や結露から守るために、フロントガラスや側面の窓ガラスを “銀マット” などで覆うマルチシェードのようなものが開発されていますが、これを使う方々がどんどん増えています。
 これなど、断熱と遮熱を効果的に行なったものといえるでしょう。
 
 今後は、各ビルダーさんが 「断熱」 と同時に、 「遮熱」 技術を研究・開拓することになっていくでしょう。
 そうなれば、エアコンやヒーターなどを無制限に使用することを避けることも可能となり、エネルギー資源の確保や、温室効果ガスの削減に寄与するようになるでしょう。
 
 ……以上、阿部社長の講義、終わり!
 勉強になりました。
 
 

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キャンピングカーの断熱と遮熱 への4件のコメント

  1. TJ より:

    主題とは関係ない質問なのですが・・・
    キャンピングカーとシートベルト装着のことをお聞きしたいのですが昨年の6月の改正以降では定員とシートベルトをどのようにしているのでしょうか!?

  2. 町田 より:

    TJさん、ようこそ。
    昨年6月の法改正以来、キャンピングカーにおいても後部座席のシートベルト着用が義務化されました。
    そのため、法改正後の新車からは室内シートも3点式ないしは2点式シートベルトを装着するようになりました。
    ただ、キャンピングカーには「横向きシート」を備えるクルマというものもあって、それに関しては、保安基準から適用が除外されています。
    また、ベッドと兼用するシートの場合は、構造上シートベルトが付けられない種類のものもあります。
    そういった意味で、キャンピングカーのシートベルトは、まだ「対応の過程にある」という言い方もできます。
    本当は、もう少しやっかいな問題があるのですが、今業界をあげて対応中のようで、まもなくいい方向で回答が出るでしょう。
    そのときに、また詳しく…。

  3. TJ より:

    ありがとうございます!
    構造として車内のレイアウトで着座位置が変わるので気になっていました。

  4. 町田 より:

    TJさん、どういたしまして。
    コメントの返信遅くなりまして、本当に失礼いたしました。ちょっとバタバタ続きで、コメントをいただいても、すぐにはお返事を書けない状況でした。
    また、何かございましたら、遠慮なくご質問ください。

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