レクビィ 「ヴォーノ」

 
 日本の風土、日本の使用環境に適したキャンピングカーというものを、かなり意識的にデザインしようという流れが、この2009年という年ほど顕著に現れてきた年はないように思う。
 そして、そういう新しい流れに乗ったキャンピングカーを見ていると、そこには各ビルダーの、何か吹っ切れたような 「明るさ」、自信からくる 「華やかさ」 のようなものが、とても強く匂ってくるように思えるのだ。
 
 この春に開かれた幕張と名古屋のキャンピングカーショーを見ていても、国産メーカーがリリースしてきた新車には、どれもみな 「テーマ」 がはっきりと見えた。
 もちろん、それ以前だって、新車開発というものはテーマをしっかり据えてから進められてきたわけだが、ただ、昔は 「定年退職をするシニア夫婦が増えるから、2人仕様のレイアウトを考えよう」 とか、「スポーツギアを積む若者が増えてきたからトランポを 1台持とう」 といったマーケット動向をにらんだテーマ設定が主流だった。
 
 しかし、現在リリースされている新車を見ると、単純にマーケットの流れを追っただけの、今までの新車開発とはひと味違う  “新味”  がどのクルマにも溢れている。
 おそらく、各ビルダーの開発陣の頭の中に、「キャンピングカー市場の急速な広がり」 というものがイメージされてきたのだと思う。
 
 だから、そういうクルマには、キャンピングカーを知らない人たちに対しても、「夢、希望、期待感」 を抱かせるような発想が渦巻いている。
 おそらく、開発者たちが、キャンピングカー製作のプロであるという自意識をいったん捨てて、「自分がキャンピングカーを知らない人間だとしたら、キャンピングカーに何を期待するのか」 …  そういう原点に立ち返って車両開発に臨んだからだと思う。
 
 その例のひとつを見てみよう。
 ここに、レクビィさんがこの09年春投入した 「ヴォーノ」 という新車がある。
 まず、下の写真を見ていただきたい。
 
ヴォーノ室内011
 
 ちょっとした大型バスコンか、輸入車でしか見られないような、優雅でのびのびとしたL字ソファのラウンジが広がっている。
 景色の良い場所にクルマを止め、このラウンジにゆったりと腰掛けて、煎れ立てのコーヒーなど飲んだりしたら、さぞやリッチな時間を楽しむことができるだろう。
 きっと、誰もがそう思うだろう。
 
 だけど、こういうリビングを実現しているキャンピングカーというのは、さぞや高価で、車体もどっしりした大きさを誇るようなクルマなんだろうな … 。
 次に訪れるのは、そういう感慨かもしれない。
 
 で、下の写真を見ていただきたい。
 
ヴォーノ外装01
 
 ハイエースでも一番小さくて取り回しのいい、ナローボディの標準ルーフなのだ。
 このインパクトはすごい。
 狭い住宅街をスルスルと通り抜けることを得意とするようなコンパクトボディの中に、大型輸入車でしか実現できないような、 「ゆとり」 「贅沢感」 「くつろぎ感」 を盛り込んでしまったのだ。
 
 こういう発想はどこから生まれてきたのか。
 このバンコンを開発したレクビィの増田浩一社長に、その狙ったところを尋ねてみた。
 
《 キャンピングカーのジャパン・クール 》
 
【町田】  ハイエースのロングバン・ロールーフを使って、このような “ゆったりラウンジ” を実現しようと思ったヒントは、どんなところから得たのですか?
 
レクビィ増田浩一社長01
▲ レクビィ 増田浩一社長
 
【増田】 これは、僕たちの考えた 「ジャパン・クール」 なんですわ。
 もちろん本当の意味でのジャパン・クールというのは、マンガやアニメ、ゲームの世界における “日本ブーム” を意味しているのでしょうけれど、ああいう映像文化の中で、日本が発信してきたものが世界に受け入れられたというのは、あれって、あの制作者たちが、別に海外マーケットを意識してそういうものを創りあげたのではなくてね、あくまでも等身大の自分たちのライフスタイルを無邪気に表現したものだったと思うんですよ。

【町田】  確かに、世界のマーケットに媚びた結果ではないですよね。
【増田】  そうでしょ? … そうなるとね、キャンピングカーの開発においても、もっと自分たちのライフスタイルを素直に見つめた上での楽しみ方、遊び方を追求してもいいのかな … と思ったんですね。
 じゃぁ、日本人の日本的なライフスタイルって何? … といったら、それは、小さな空間であったとしても、その空間を限りなく、豊かに、リッチに使いきろうという、様々な工夫によって生まれてきたものだという気がするんですね。

【町田】  国土が狭いわりには人口密度が高い国ですからね。
【増田】  そうそう。… ただ、それだけじゃなくてね、日本人って、むしろそういう限られた空間を好むような形で、美意識を育てたり、文化をはぐくんできたような民族じゃないですか。
 例えば、茶室。
 JRVAの広報誌にも書かれていたけれど、ああいう 「スモールスペースの中に、宇宙の広大さを封じ込める建物」 ってのは、日本人独特の感性から生まれてきたものらしいんですね。
 で、これ、大きさ的にいえば、茶室ぐらいのスペースなんですわ。

【町田】  なるほど。テイストは洋風だけど、精神は 「和の文化」 の茶室であると … 。
【増田】  ま、大げさにいうとね (笑) 。で、茶室のような空間が、なんで 「くつろぎ」 とか 「ゆとり」 感じさせるのかというと、あれねぇ、自然と一体となっているんですね。
 窓を開けると、すぐ日本庭園が見えたり、障子で仕切っても、そこに木の影が揺れて映ったり …。
 で、このクルマでも、エントランスのスライドドアを開けて、外の空気を直に味わえるような場所に、でーんとこのラウンジがあると。

【町田】  まさに、極小の室内空間が、そのまま広大な “宇宙” に直結しているというわけですね。
【増田】  そう “うまい言葉” を思い浮かべながら造ったわけではないんですけれど、まぁ、そういうことなんですわ (笑) 。
 
ヴォーノ04
 
《 スモールボディのメリット 》
 
【町田】  実用面においても、取り回しの良いサイズに収めたということは使い勝手の向上につながりますね。
【増田】  ええ。旅を続けていれば、時には、市内の地下駐車場に入ることもあるだろうし、古い温泉街などに入っていけば、狭い道も多い。
 そういうときに、運転手がストレスを感じない車両サイズを維持しておくというのは、日本型の “旅ぐるま” を開発するときには欠かせない配慮だと思うんですね。
 
【町田】  こういう感じの旅ぐるまが受け入れられるというマーケット的な読みはあったのですか?
【増田】  はい。やっぱりね、お客さんの志向が10年前くらいとは明らかに違ってきているんですね。
 昔はね、キャンピングカーといえば、「キャンプ」 そして 「アウトドア」 。
 僕らがマスコミの取材を受けたときも、写真を撮る段になると、カメラマンから出るリクエストは、必ず 「外にテーブルを出して、バーベキューでもやっている演出をしてもらえませんか」 というものばかりだったんですわ。
 ところが、今は違うんですよ。
 「桜前線を追いかけて、日本一周を楽しんでいるようなユーザーさんを紹介してくれませんか?」
 … というように、明らかに 「旅のツール」 という意識で捉えられるようになってきたんですね。
 
【町田】  キャンピングカーの使い方に広がりが出てきたわけですね。
【増田】  ええ。そうなると、キャンプ道具をいっぱい搭載することができて、何もないところで快適に過ごせるような装備を満載するというクルマだけではなく、旅先でくつろぐことに主眼を置いたレイアウトだって必要になるだろうと判断したんですね。
【町田】  そういうときに、このゆったりしたL型ラウンジは、旅の疲れをいやしてくれる極上の空間を約束してくれますね。
 
ヴォーノ内装01
 
【増田】  もちろん、ご夫婦 2人で使われる場合は、このラウンジをベッドにしたままの状態で、気楽な旅を楽しんでもいいわけです。
 横座りシートの座面を前にスライドさせて、シートの背もたれを載せるだけで、簡単にベッドが作れますから。
 
《 造っている人間も楽しめるクルマ 》
 
【町田】  価格的にも、買いやすい価格帯に収まっていますね。消費税込みで、370万 …。 
【増田】  でも、けっこう手の込んだクルマなんですよ。普通の作り方をしていると、ちょっとこの価格では厳しいんですね。
 しかし、手を抜いてはいない。
 僕は、このクルマを現場で造っているスタッフには、 「手を抜くのではなく、造り方に慣れることによって生産性を上げろ」 と言っているんです。
 
ヴォーノ内装03
 
【町田】  慣れる…?
【増田】  つまりね、こういうクルマというのは、造っている人間たちも楽しいんでしょうね。
 黙って見ているとね、どんどん凝ったことをやり始めるんですよ。
 昔の僕だったら、
 「そんな凝ったことをやって、コストを上げてはいかん」
 と叱っていたのでしょうけれど、今はね、職人たちが楽しんで造っている方が良いクルマになると思っているんです。
 だから、
 「凝ってもいいから、早くその造り方に慣れろ!」
 … ってハッパをかけているんですけどね (笑)。
 
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