ANNEXスタイル

 
 「日本の文化を反映したキャンピングカー」 。
 言葉でそういうのは簡単だが、では、それはどんなキャンピングカーなのか。
 改めてそう問い直してみると、RV業界の人にも、ユーザーにも、キャンピングカーメディアに携わる人たちにも、にわかに答え切ることができない。
 
 しかし、それを目指して、着々と「形」として造り上げていくキャンピングカーメーカーの社長さんがいる。
 アネックスの田中昭市さんだ。
 
アネックス田中社長01
▲ アネックス 田中社長
 
 カムロードベースのキャブコン「ネビュラ」を発表して以来、アネックスのキャンピングカーはひとつの方向性を確立してきた。
 それは、欧米先進国にもない、日本独自のオリジナリティを備えたデザインを追求したものだった。
 それを、言葉で示すと「アネックススタイル」。
 
 同社は、幕張や名古屋のキャンピングカーショーでも、その展示ブースの中央に、その言葉をくっきりと掲げたディスプレイを展示した。
 ショーの会期中の忙しいさなか、田中昭市社長に「アネックススタイルに表現されるキャンピングカーとはどんなものか」を尋ねたみた。
 
アネックススタイル看板02

アネックススタイル
 
【町田】  ずばり「アネックススタイル」って何のことですか?
【田中】  「うちのオリジナル」という意味なんです。まぁ、デザイン的なオリジナル性ということですね。
 そういうオリジナリティを備えたキャンピングカーを製作して、ひとつのライフスタイルを提案してみたい…と思って考えたキャッチなんですけどね。
 
【町田】  それは、どういうオリジナリティということなんでしょう?
【田中】  つい4~5年くらい前までは、日本のキャンピングカーは、ヨーロッパデザインを目指すか、アメリカンなデザインを目指すか、…そんなことを何の疑問もなく繰り返していたんですよ。
 うちも「エディ」というクルマを造っていたときがあるんですけど、その内装テイストはアメリカンだったんですね。
 すると、販売店の方から、
 「最近はヨーロッパ調がブームだから、エディもヨーロッパ調の内装に変えた方がいいよ」
 などと、よく言われたんですよ。
 こちらも、 「そういうもんか … 」って、何の疑問もなく、その提案に耳を傾けていたりね(笑)。
 
本当の「和」の文化って何か?
 
【町田】  確かに、少し前はそういう時代でしたね。V社はライモ家具のヨーロッパ調、Y社の内装はアーリーアメリカン調とか、僕らも何の疑問もなく、そういう言葉を使って紹介記事を書いていましたものね。
【田中】  でも、それってよく考えてみると、何か変でしょ? 建築の世界とかアートの世界って、別に「アメリカ調」とか「ヨーロッパ調」などという表現を使わなくても、一流の日本人デザイナーやアーチストたちが、世界に通用するオリジナルデザインを創り出しているじゃないですか。
 なんでキャンピングカーはそうならへんのやろ … と思ってね。
 
【町田】  で、いろいろチャレンジされたわけですね?
【田中】  ええ。日本人なんだから「和」の様式を採り入れたキャンピングカーを造ってみようと考えたこともありました。
 それで、畳仕様のキャブコンを製作してみたことがあるんですよ。
 で、仕上げてみると、やっぱり自分でも、ちょっとしっくり来なかったんですね。
 今から思うと、畳とか障子を使う世界というのは、部屋全体の縦横比とか、目線の位置とか、しっかり計算された空間造形を貫かないと、サマにならないんです。
 それを、欧米家具を使うことでまとまっていたキャンピングカーの空間にそのまま投入しても、整合感が出ないのは当たり前なんですね。
 
【町田】  でも、そういうチャレンジも大切だったわけでしょ?
【田中】  はい。チャレンジしてみてから、そういうことに気づくわけですからね。
 それで、一からやり直そうと思いましてね。 「ネビュラ」を設計するときには、思い切って、デザインの専門家に相談してみたんですよ。
 「アート&クラフト」社というところの中谷さんという方ですけれど、その方から教えてもらったものは大きかったですね。
 
都会の夜景も楽しめるRV
 
【町田】  どういうことでしょう?
【田中】  結局ねぇ、その方とコンセプトメイクしていると、もう今までとは違ったアプローチが次々と出てくるので、目からウロコが落ちたというような気分になったのですよ。
 まず、キャンピングカーの内装色をどう決めるかなどという前に、どういうシチュエーションで使うと、そのクルマが輝いて見えるのか…とか、そのクルマを使っていると、周りの風景がどう違って見えてくるか…とか、もうライフスタイルから入っていくんですね。
 
【町田】  まず人間の生活があって、その次にキャンピングカーがあると…。
【田中】  そういうことなんですけど、ほら、キャンピングカーってどうしてもアウトドアだとか、自然の中で…というイメージがあるじゃないですか。
 しかし、自然の中で使うにせよ日本だったら、そういう場所に至るまでは都会の中を通ることもあるだろうし、場合によっては、都会の夜景を見ながら、ちょっとキャンピングカーの中でくつろぐ…というシチュエーションだって考えられるわけですよね。
 そう考えるとね、「日本的なるもの」っていうのは、山から1時間も走ってくれば都会に戻ってしまうという、そういう日本の生活空間を正直に見つめ直すところから生まれてくるのではないだろうか … と考えることができたんですよ。
 
【町田】  イメージの中の「日本」とか、理念の中の「日本」ではなくて、現代社会で生きている日本人が、自分の足で歩いて感じる「日本」という意味ですね。
【田中】  そう。そういうライブ感覚を持った日本文化というものを考えないと、なんか新しい提案にはならないだろうと思ったんですよ。
【町田】  ネビュラのコンセプトは「走るモダンリビング」でしたものね。
【田中】  ええ。今の日本人の住宅構造を見ても、必ずしも畳みと障子を使わなくても、欧米とも違う日本独自の住宅様式というのが生まれているわけじゃないですか。
 その感覚を大事にした方が、本当の意味での「日本的なるもの」に近づくとちゃうんかな? …って思ったわけですね。
 
リコルソに秘めた想い
 
【町田】  そのような「生きている日本文化」というものを、実際の車両開発では、どのように実現されたのでしょうか。
【田中】  たとえば、私たちの開発した新しいキャンピングカーで、「リコルソ」というバンコンがあるのですけれど、これ、見ていただくとお分かりになると思いますが、運転席とリビングを「家具」で仕切ってしまっているし、リヤドアを開けても、そこに壁が立ちふさがっている。
 普通に考えたら、めちゃくちゃに使い勝手の悪いバンコンなんですわ。
 でも、室内に入ってみると、もう無類に心地よいし、落ち着くんですよ。
 つまり、運転席のような “自動車的な機能” を視線から隠すことによって、クルマであることを忘れてしまうように造ったつもりなんですね。
 
リコルソ外形01
 
【田中】  で、そのことによってですね、たとえば都会の中でもちょっと景色のよいところに止めて、室内から外を眺めれば、もうそれだけで「リゾート施設から眺めた景色」に変わる。
 つまりね、日本という国は、欧米のように圧倒的にワイルドな自然というものが少ない。
 その代わり、ちょっと人工の手が入った「リゾート的な景観」なら、ものすごく豊富にある。
 そういう日本の特殊事情を楽しめるキャンピングカー空間というものを造形することが、すなわち「日本的なるもの」の追求なのかな? …と思うんですよ。
 
リコルソ内装02 リコルソ内装03
 
【町田】  でも、それって、ユーザーの想像力が試されるようなところがありますよね。
 たとえば、ちょっとヤシの木が植わったような海岸の駐車場に止めて、「ここは素晴らしいリゾートだ!」と思い込むためには、それなりの研ぎ澄まされた感性が要求されるわけでしょ?
 ある意味で、バーチャルな仮想空間で遊ぶことにも似ているわけですから。
【田中】  ええ。だからクルマの方も、そういうユーザーさんのイマジネーションが活発に働くようなデザインというものが要求されるわけですね。
 そこで、例えばリコルソでは、リゾート施設の一室から外を眺めているような「部屋」の感覚というものを大事にしましたし、リゾート感を出すために、家具の色合いとかソファーの材質感なども吟味しているわけです。
 
日常が旅になる
 
【町田】  確かに、日本中どこにでも「ちょっと良い景色」という場所はあるわけで、それが全部「自分だけのリゾート」になるとしたら、それはリッチな体験を得ることになりますね。
 僕はよく、こう考えるですけれど、日本という国は、どこに行ってもコンビニはあるし、立ち寄り温泉を探すのも簡単だし、それだけどんどん便利な国になってきたわけですけれど、その反面、日本中どこへ行っても、同じ景色が展開されるようになってしまった。
 そういう退屈感から逃れるためには、個性のあるキャンピングカーって必要だな…って。
 キャンピングカーという “魔法の空間” が、人間の想像力を刺激することによって、周りの風景も違ったように見えてくるな…って。
 
リバティLE外形01
▲ リバティLE
 
【田中】  そうなんです。もうひとつキャブコンで 「リバティLE」 というのがあるんですけれど、これは、その “リゾート地めぐり” を、さらに1ヶ月ぐらいの長期にわたって楽しめるように開発したクルマなんですが、やっぱり「魔法の空間」という狙いは大事であって、そのための意匠にもこだわりを持っているわけですね。
 たとえば、このエントランスステップのクロームメッキの取っ手。
 これなんか、けっこうコストが高くつくので、普通だったら絶対に使わないような部品なんですけれど、付けてみたら意外とぴったり合ってしまった。
 
リバティLE内装01
▲ リバティのエントランスドア脇の取っ手
 
【町田】  もう外せないと(笑) 。
【田中】  ええ。やっぱりこの取っ手を握って中に入るときに、この銀色の輝きが、「さぁ、これから夢空間に突入するぞ!」というような興奮を呼び起こすような気がして… (笑)。
 
リバティLE内装03
▲ リバティLE室内
 
【町田】  人のイマジネーションを膨らませる力というのは、そういう細部のこだわりをいかに多く集積させたか … ということから生まれますものね。
 旅というのは、人を非日常へ誘導させることから始まるけれど、その非日常というのは、日常的な「物」が、普段とは違った形で現れるときに感じられるといいます。
 だから、本来ならステップの乗り降りを助けるためだけのアシストグリップが、クロームメッキの輝きを放つというだけで、それは、アシストグリップであっても、もうすでに普通のアシストグリップではない。
 そこから先は、非日常の夢空間が広がるというわけですね。
 
【田中】  ある大手自動車メーカーさんのCMに出てきた言葉で「いいなぁ」と思ったキャッチのひとつに、「日常が旅になる」というものがあったんですよ。
 例えば、通勤の途中で見ているような見慣れた風景も、ある日、ある陽射しの中で見ると、「あ、こんなにきれいな場所だったんだ!」とびっくりするようなことってあるじゃないですか。
 「日常が旅になる」というのは、そういうことを意味していると思うんですよ。
 キャンピングカーというのは、そういう瞬間にバクっと食らい付いて、それを魅力的な「旅」にしてしまう力があると思うんですね。
 
【町田】  そういう楽しみ方を味わえるように、人間を育ててくれるクルマ…
【田中】  そのクルマがもたらすライフスタイルを、「アネックススタイル」。
 …まぁ、そんな気持ちを込めて、むりやりひねり出したキャッチなんですけどね(笑) 。
  
 
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