トイファクトリー トップインタビュー

【 2009年 トイファクトリーの断熱対策を聞く 】
  
 未来社会に対する積極的な提言を、今キャンピングカー業界から一番強く発信しているメーカーとしてトイファクトリーさんの存在感は大きい。
 「断熱」 「ソーラーパネル」 「床暖房」 。
 それらの技術を駆使した同社の車両開発は、2009年のキャンピングカー産業の現在を語る上で欠かせないものだ。
 同社の藤井昭文社長に、数々の新技術を開発した背景やその苦労話をうかがってみた。
 
《 キャンピングカーは環境に優しくなれるのか 》
 
【町田】  この春 (2009年) に幕張で行なわれた 「キャンピング&RVショー」 を皮切りに、トイファクトリーさんは、未来に対する積極的な提言を秘めた新製品を次々と投入されているわけですが、そのテーマはみな 「環境対策」 という視点で統一されています。
 このような環境への “まなざし” をキャンピングカー開発に盛り込もうと考えられた動機は、どのようなところにあるのでしょうか。
 
トイファクトリー幕張展示風景01
▲ トイファクトリー 幕張ショー展示風景
 
【藤井】  地球の温暖化防止、エネルギー源の枯渇などが、人々の日常生活の中にも話題として採り上げられるような時代になると、僕たちのようなキャンピングカーメーカーといえども、21世紀を生きる企業としては、もう見逃すことのできない大問題だと感じていたんですね。
 そこで、いろいろなユーザーさんたちを中心に、「環境に適したクルマだったら、少しぐらい高くても買いますか?」
 という質問を投げかけてみたのですが、すると、大多数の皆さんが 「買うよ」 というんですよ。
 「なぜ?」 と尋ねると、
 「自然の中で遊ばせてもらっているのだから、それへの対策を施しているクルマに乗るのは、キャンピングカー乗りの責務だ」
 というような答が、実に多く返ってきたんですね。
 やはり、「自分だけが快適であればいい」 という時代は終わったと考えている人が増えてきたのではないでしょうか。
 たとえば、トヨタさんが発売されているハイブリッドカーのプリウスなどが人気を集めているというのも、そういう気分を反映しているように思うんですね。
 
【町田】 なるほど。キャンピングカーに乗るユーザーさんたちの意識も、変ってきたというわけですか。
 
【藤井】 ええ。僕もちょっと意外に思えるほど、ユーザーさんたちの意識は進んでいたんですね。
 それと、昨年デュッセルドルフで開かれた 「RV世界会議」 でも、各国のRVメーカーの首脳陣たちに、「一番大事なテーマは何か?」 ということをできるだけ聞いてみたんです。
 すると、当社が輸入販売を行うフェント・キャラバン (FENDT CARAVAN) の社長も含め、みな口々に 「今が世界の転換期なんだよ」 というわけです。
 どういうことかというと、やはりヨーロッパなどでは 「環境負荷を低減する」 ということがRV業界でも重要課題になっていると。
 僕たちが今回の車両造りの参考にしている場所として、世界で最もエコロジー技術が進んでいるといわれる南ドイツのフライブルグという町があるのですが、そこの代表に話を聞いても、やはり燃料電池とか、エタノールなどという化石燃料に代わる代替燃料に関心を深めていることが分かったんです。
 
バーデン外形02 バーデン内装02 
▲ 新しい提案を秘めたトイファクトリーの新型バンコン 「バーデン」
 
《 断熱対策のもたらす本当の意義 》
 
【町田】  それを知って、トイファクトリーさんも率先して環境問題にコミットしなければならないと思ったわけですね。
【藤井】  はい。このままでは日本のRV業界は、世界のRV社会から見捨てられるのではないかというほどの危機意識を抱きましたね。
【町田】  そこで、このたびその 「環境対策」 を全面的に打ち出したキャンピングカーを全面的にリリースされたということなのでしょうけれど、具体的には、どういうシステムを構築されたのでしょうか。
 
【藤井】  「環境対策」 というと大げさかもしれませんが、しっかり環境を意識した車両造りを行いたいと考えたわけです。
 僕たちは、これまでも 「断熱対策」 というものに力を入れて、ずっとそれに取り組んできたつもりなんです。
 ただ、「断熱対策」 が、具体的に地球環境の保全にどれだけつながるのかということを、僕たちも実証的なデータとして持ってはいなかったんですね。
 そこで、それを主観性が混入する恐れのある自社取りデータではなく、しっかりした研究機関を通して研究を進め、それを発表するようにしたのです。
 具体的にいうと、LCA (Life Cycle Аssesment = ライフ・サイクル・アセスメント) という仕組みなのですが、そこの研究に準じて専門家の指導のもとにデータ取りの成果を評価してもらい、それを公開するという手順を踏みました。
 まぁ、僕たちの今までの断熱へのこだわりの本当の成果を見ていただくという意味もありました。皆さんに、断熱は本当に効果があることを理解していただくため……という気持ちが一番強かったのかもしれません(笑)。
 
【町田】  そのLCAというものを少し説明してください。
【藤井】  これは、各企業やサービス部門の環境対策を評価する産業環境管理協会という団体で、ある製品なりサービスなりの 「製造」 「輸送」 「使用」 「廃棄」 「再利用」 まで含め、そのインプット、アウトプットを拾い出し、それがどれくらいの環境負荷を及ぼすものなのかを審議してですね、さらに、それに対する対策を施した製品などが、具体的にどれくらいの環境負荷の低減を実現したか…ということを測定する機関なんですね。
 日本では、1995年に産官学の協力によって、「LCA日本フォーラム」 というものが設立されまして、現在では、環境負荷削減に取り組む企業、組織などを表彰するようなシステムもできあがっています。
 
トイファクトリー幕張ショーブース
▲ 「エコ」 を訴求ポイントに挙げたトイファクトリーの2009年幕張ショーブース
 
【町田】  なるほど。そうやって得られたデータをどのように活用されたわけですか。
【藤井】  はい。それを数十ページの報告書にまとめてですね、経済産業省の方に提出しています。
 そこで、各企業のそれぞれの環境活動の実績をまとめた報告書のようなものとして、『製品グリーンパフォーマンス高度化推進事業』 というものが編纂されるわけですが、その中に、トイファクトリーから 「断熱キャンピングカーのLCA効果」 というような形で発表されることが決まりました。
 
【町田】  その成果を、すこし具体的に説明していただけますか?
【藤井】  断熱ボディを造ることで達成されるものの一つとして、エンジンをアイドリングしてヒーター、クーラー効果を得るという方法から脱出することができます。
 そこで、実際にそれがどのくらいの効果を得るのかということを、実際、断熱したバンコンと断熱加工をしていないバンコンの同時走行テストを行なって測定してみたんです。
 すると、断熱加工したバンコンの計測燃費は、リッター当たり0.95kmに相当することがLCA評価基準に基づいて実証されたんですね。
 
【町田】  何か分かりやすい “例え” でいうと、どういうことなんでしょう。
【藤井】  このリッター当たり0.95kmという数値はですね、年間走行距離を10,000kmと仮定した場合、年間に280kgのCOの排出減に相当するんです。
 一般的に、杉の木が1年間に吸収するCOは約14kgだといわれています。
 すると、僕たちが開発する断熱バンコンというのは、1台で杉の木20本分のCO削減効果が達成できるんです。
【町田】  地球全体にもたらす効果は微々たるものかもしれませんけれど、台数が増えると大きな力になりますね。
【藤井】  はい。その力をさらに増大させるために、このほど開発したのが、「ソーラーバンコン」 です。
 これは、もう最初からルーフにソーラーパネルを搭載することを前提として、ルーフと一体型となったパネルスペースを製作しました。
 最初は 「カッコよくソラーパネルを載せたいなぁ」 と思ったのがきっかけでしたけれど (笑) 。
 
トイファクトリーソーラーパネル02
▲ TOYs BOXに搭載されたソーラーパネル
 
《 ソーラーパネルでCO2 削減に協力 》
 
【町田】  それは全車に装着可能なんですか?
【藤井】  ええ。今はまだオプションですが、全車に搭載できるようにしました。
 ソーラーシステムの特徴は、ご存知のように 「化石燃料に依存しない」 というところにあるわけですね。
 これも計算してみると、僕たちのソーラーバンコンに搭載されるパネルの発電量は年間約166キロワットなんです。
 これを日本の全電力の平均COの発生量と比較すると、年間約52kgの排出量低減に相当することが分かりました。
 先ほどの杉の木の例でいいますと、杉の木が 1年間に吸収するCOは、約14kgといわれていますから、トイファクトリーのソーラーバンコンは、1台で杉の木の3.7本分のCOの削減効果があるということなんですね。
 
【町田】  なるほど。説得力がある (笑) 。
【藤井】  はい (笑) 。2005年の 「京都議定書」 では、日本の温室効果ガス排出量を2012年までに、1990年を基準年として、そこから 6パーセント削減することを謳いましたよね。
 そこで 「チーム-6パーセント」 などの活動を通じて、いま国は、それを国民的なプロジェクトとして進めているところですけれど、僕たちの会社もそれに貢献するために、「ソーラーバンコン1000台」 を目指すという運動を展開しています。
 もしそれが実現したら、その効果は3,700本の杉の木、つまり東京ドームの4分の1個分の森に相当するCO の削減に協力することができます。
 
【町田】  そのような研究は独自で行なわれたわけですか?
【藤井】  いや、自社だけでやる研究には限界がありますので、これは琉球大学の工学部と共同して研究しているところです。
 幸い、私たちの工場が岐阜県のほかに沖縄にもあるものですから、とても連絡がいいんですね。
 沖縄は太陽光が強いので、四六時中データが取れます。
 で、そういう環境を利用して、バッテリーにチャージするのに一番効率のよいシステムというものを、琉球大学の力を借りて開発しているところです。
 おそらく、突入する電力の一番高いところを維持できるような機械的なシステムを構築することができるはずです。
 
《 画期的な床暖房システム 》
 
【町田】  そのソーラーシステムの開発と同時に、床暖房に対しても、新しい提案をなさいましたね。
【藤井】  はい。たとえば、僕たちが新しく開発した 「エコロ」 という新型ライト/タウンベースのバンコンがありますが、これなどは、この限られた空間の中にもしっかりした床暖房を実現しています。
 
エコロ外形01 エコロ内装01
▲ ライト/タウンエースベースの 「エコロ」
 
【町田】  どういう構造の暖房なのでしょう。
【藤井】  新型ライト/タウンベースの場合、一番下に発泡断熱材を敷くんですね。その上にコンパネ材を敷きまして、それからセラミック塗装を施して、その上に0.4mmのPTCという発熱体を敷きます。
 その上に、さらに4mmのベニヤ版が入り、全部で5層~6層になっています。
【町田】  PTCって何です? ごめんなさい、工学的な知識に暗くて…。
【藤井】  PTCというのは、「自己温度制御機能」 を持つ発熱体で、特殊インクをフィルムに塗布して、超薄型の……フレキシブルシートといいますけど、そういうシートで仕上げた発熱体なんですね。
 このPTCという面状発熱体による遠赤外線効果を利用したのが、僕たちの暖房システムなんですけど、そのPTCを収めたフィルムが、わずか0.4mmという薄さを実現しているので、まず厚みを取らない。だから、室内のクリアランスを十分に確保できる。
 それと、従来の熱線方式と違って、火災が生じたりする危険性を免れるという特徴があります。
 
トイファクトリー床暖房模型01
▲ 「エコロ」 に搭載された床暖房の説明模型
 
【町田】  従来の床暖房というのは、床に熱線を通したり、お湯を配管で回したりするシステムが一般的でしたよね。
【藤井】  はい。それがもう全然違うんですね。
 実は、僕たちもコースターをベースに床暖房を開発したことがあったんですけど、それは、単純にホースを通して、その中にラジエーターの水を回す方式だったり、後は、断熱材の周りにFFヒーターの熱を落とし込んだりするシステムだったのですが、それだと、どうしてもバンコンのようなクルマの場合は、室内高が取りづらくなってしまうんですね。
 また、そういう方式では、エコロジーという観点からも問題が出てくる。
 そこで、このシステムを採用することを決めたんです。
 
【町田】  いつ頃から、開発を進めていたのですか?
【藤井】  もう、去年の幕張のショーが終わった頃から、断熱を高めていくという方向で、床暖房の研究にも着手していましたね。
【町田】  その成果が実って、省エネと安全性の両方が確保できたと…。
【藤井】  はい、その通りですね。結局今までのものは電気が絶えず入れていないと熱源を確保できなかったんですが、これはON/OFFがフレキシブルにできるわけです。
 ある一定温度までは温度が上がるんですけど、上がった瞬間に、その温度を保ったまま暖房機能が解除される。
 そして、冷えてくるとまた熱を出す。最低温度は20度から最高は300度ぐらいまで設定できます。
 
【町田】  すごいですねぇ! そのような暖房システムを採り入れたキャンピングカーというのは、海外にはあるのでしょうか。
【藤井】  私が知っている限りないんですよ。ヨーロッパでも、まだ熱線を入れるような前のシステムのままなんですね。
 日本では、すでに住宅などでは相当普及しているシステムなんですが、それをクルマに採り入れているところは、まだないと思います。 
 
《 大手メーカーも注目 》
 
【町田】  藤井さんの話をうかがっていると、日本のキャンピングカーの技術水準が非常に高まってきたような印象を受けます。
 なんか、キャンピングカー業界の将来は明るいぞ、という希望のようなものが湧いてきますね。
【藤井】  そういってくださると嬉しいですね。
 おかげさまで、こういう僕たちの方向性を大手自動車メーカーさんも評価してくださいまして、全国のトヨペットディーラーに、僕たちのクルマが持っているソーラーパネルの意義とか面白さを採り上げてもらえるようになりました。
 
【町田】  それは、具体的にはどういうことなんですか?
【藤井】  大手自動車メーカーさんが、最近 「クルマをベースにした新しい楽しみ方」 について、全国のディーラーさんにアイデアを募集したんですね。
 それで、全国のディーラーさんから様々なアイデアが寄せられたようなのですが、その中で選ばれたのが、ECO (エコ) を意識した私たちが提案したクルマだったんです。
 断熱とかソーラーを提案した 「環境対策の時代を見据えたクルマ」 ということが評価されたというわけですね。
 
【町田】  ちなみに、ほかの乗用車ディーラーさんから出ていたアイデアというのは、どのようなものだったんですか?
【藤井】  詳しくは聞いていないのですが、「エアロの装着」 とか 「新しいスポーツタイプデザイン」 などといった外形的な処理を提案したものが多かったと聞いています。
【町田】  やはり、未来型の自動車を提案する場合、「社会性」 「公共性」 というものが必要になってきたということなんでしょうね。
【藤井】  ええ。そこから話が進みまして、今トヨタさんが公開している 「トヨペットスクエア」 というホームページには、ハイエースのコーナーがありまして、大げさかもしれませんが 「ハイエースキャンピングカーの代表」 という形で、うちのトイズ・ボックス (TOYs BOX) が紹介されたりしています。それに乗ったオーナー様がどのように楽しまれているかなどということも紹介されていて、本当にうれしいことです。
 
【町田】  なるほど。「トヨタ公認のRV車両」 というわけですね。
 トイファクトリーさんの車両開発が、キャンピングカー業界全体の認知度を高めたことは確かなようですね。
 
 
 

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