不況報道に飽きた!

 とにかくテレビや新聞、雑誌などを見ていると、もう嫌になるほど 「不況」 「減益」 「危機」 「崩壊」 の大合唱だ。
 なんとかなんねぇのかな…。
 日本のメディアは欧米などと比べて、とりわけ 「危機」 と 「崩壊」 が好きだという話があるけれど、どうも、そういう言葉を使った方が、「希望」 や 「将来性」 などという言葉を使うよりも “売れる” らしい。
 だけど、毎日そんな言葉を見たり、読んだりする方はたまらねぇよ。
 財布のヒモがキュッと縮まっちゃうだけでなく、首ネッコも縮まっちゃう感じで、まったく自分が、寒空の下で途方に暮れる泥ガメになったような気分になる。
 とにかくメディアは、「100年に1度の不況」 などと不安を煽っているわりには、「どうしたら抜け出せるのか?」 、「何が原因でこうなったのか?」 ということにはほとんど言及しない。
 せいぜい報道番組などで、ちょっと名の知れたエコノミストなどを登場させ、
 「まずアメリカの景気が回復しない限り、日本だけが努力したところで無理ですね」
 などと言わせてお茶を濁すだけ。
ウォール街証券取引所
▲ アメリカ経済の象徴 「ニューヨーク証券取引所」
 さらに悪いのは、各局の引っぱり出すエコノミストといわれる人たちが、みんなてんでんばらばらのこと言ってくれること。
 視聴者は何を信じていいのか分からなくなる。
 誰かがネットで言ってたけれど、今 「エコノミスト」 と呼ばれる人たちの大半は、投資銀行家とか株屋さんの人たちで、彼らは従来の金融システムのつくり出した世界観の中でものを見て、今までの金融システムのタームで考えているに過ぎないんであって、そういうシステムが破綻した現状を説明する 「言葉」 を持っていないことは確か。
 だから、メディアの人たちに言いたいなぁ…。
 この先どうなるかなんて、本当は何も分かっていないのに、中途半端に分かったフリして報道するのはやめてくんない?
 はっきり言うと、今の地球規模の不況が今後どうなるのかなんて、誰ひとり分かるはずないんだってば。
 「100年に1度の不況」 とかいうけれど、もしかしたら 「千年に1度」 …いやぁ、ひょっとしたら、人類が経験する初めての大パニックなんじゃねぇの?
 たぶんこの先世界がどうなっていくのか、誰にも分からない。
 日本がどうなるのかも見えない。
 「先が見えない」 と、誰もが 「見える範囲」 の評価や批判に走っていく。
 「総理大臣が漢字を知らない」 だのとみんな騒いでいるけれど、本当の問題が見えづらい世の中になると、誰もが見える範囲の批判や中傷しかできなくなってしまう。
 なぜ、「先が見えない」 のかというと、今回の米国金融危機から生じた世界的な不況が、資本主義経済が不可避的に持ってしまう景気循環的なものなのか、それとも政治・経済・金融・文化・地球環境などが複雑に絡んだ構造的な変化から来るものなのか、そこのところがはっきりしないから…なんだろうと思う。
 きっと各国の政府や大企業に雇われているシンクタンクが、さまざまなデータ解析を行って、いろいろな結論を導き出そうとしているはずだけど、解析するデータの収集基準が各調査機関によってまちまちだから、恣意的な推論が無数に乱立することになる。
 たとえば、エネルギー資源が今後どれだけ地球に残されているかなんて、石油の埋蔵量の算定そのものが考え方によって無数に存在するので、その正確なところは誰も把握していない。
 崩壊の危機に瀕している企業に、どれだけ公的資金を注入すべきなのかといったって、これだけ複雑に入り組んでしまった金融派生商品をどう仕分けするかっていう問題がまず前面に出てくるから、そう簡単に答が出るものではない。
 なんでも金融危機寸前だった頃の世界の金融派生商品の取り引き高は、6京3,772兆円なんだってな。
 はっきりいって、人間の想像力や計算力を超えた金額なわけね。
 そういうマネーがサイバー空間を飛び交っていたわけだから、そりゃひとたび破綻したら収拾がつかないわな。
 なにしろ、アメリカで生み出された金融工学というのは、アポロ計画が一段落して自然科学者が大量失業し、その連中がやることがないってんで、金融界に流れたのが始まりだっていうじゃない。
 まぁ、頭の良い人たちが、机上の空論でつくり出した“今風の錬金術”。
 当の金融工学のプロたちが、今どうしていいのか分からないってんで天を仰いでいるそうだから、こりゃホントの答なんか、すぐに出るものかいな。
 だから、世界経済の行く末についても、調査機関がみな勝手な推論を無数に林立させるから、それを鵜呑みにした各メディアが、またそれぞれ視聴者ウケしそうな答を選んで世の中にバラまいていく。そりゃ、人や企業がますますパニックに陥るわけだよ。
 メディアの人たちにお願いしたいのは、この先どうなるのか…なんて無責任な解答を出すことじゃなくてさ、
 「この先どうなるか分からない! だけど、分からない理由はこうだからだ」
 っていうところを論理的に説明してほしいよね。
 それは難しいことだけれど、そこをしっかり説明できると、誰もがもうちょっと冷静になれるんじゃないかな。
 そいつを外して、「景気対策をどうするのか」 なんて、いくら議論したって空しい。
 今、世界各国の政府が力を入れているのは、不況からの脱出するための 「景気対策」 だけど、その景気対策が、今までの産業構造に依拠したものでいいのか? という問題がある。
 エネルギー資源の問題やら環境汚染の問題を考えると、すでに現在の産業構造そのものが末期的な様相を呈していることは、素人でも直感で分かる。
 なのに、どこの政府が掲げる景気対策も、従来型の産業構造を再び活性化させる方向でしか物事を進めていない。
 EU諸国だって、この前までは 「環境対策が最優先」 とかいってたクセして、いざ不況だっていうと、みなトーンダウン。
 やっぱ、政治家たちの支持母体である既成の大企業優遇策を考え始めている。
 今の産業構造を “良いモノ” としてみんなが無条件に承認してしまうから、大手企業は自己保身感情をむき出しにして、大量リストラや内定取り消しなんかに踏み切っちゃう。
 資本主義社会ってのは、労働者がすなわち商品の購入者という構造になっているんだから、「労働者」 をいたぶることが 「消費者」 の首を絞めることになるという単純なことが、どうして分からないのかしら。
 また、「景気対策」 っていうと、すぐ 「地方は瀕死の状態だ。それは道路がないからだ」 ってな道路族を喜ばせる運動が起こってしまうけれど、自動車が売れない時代にクルマの通らない道路造ってどうすんの? てな問題もあるしさ。
 公共事業の振興は、確かに有効な方法のひとつか分かんないけど、それっ 「道路建設」 だけじゃないだろ?
 とにかく、みんな従来の産業構造に依拠した形でしか、物事を考えないよな。
 そういうのって、一時の景気浮揚策にはなりえても、さらにその先の時代には有効なの? という不安感は常についてまわる。 
 誰もが漠として感じる現在の 「閉塞観」 「行き詰まり感」 の根本的な理由はそこにもあるよね。
 まぁ、今の不況は 「千年に1度」 ぐらいの転換期がもたらした宿命なんだと割りきってさ、誰もが今までの 「成功体験」 を捨てて、新しい時代にチャレンジだ! …ってな気持ちで開き直るしかねぇんじゃないの。
 人間、誰だって 「良かった時」 の思いを引きづっちゃうと、階段一歩下がっただけで、もうドォーッと井戸の底まで落ちちゃったような気分になるからさ。
 水前寺清子さんだっけ?
 「365歩のマーチ」
 3歩進んで2歩下がる。
365歩のマーチ
 結果的に 「一歩の前進」 ということなんだろうけれど、まぁ、歴史の歩みってのは、そんなもんでね。
 
 人間の社会や文明は、不可逆的に進歩を遂げていく…っていう 「進歩史観」 というのが、近代の幻想だってことを、この歌は教えてくれていたのかも分かんないね。
 当時はイヤな歌だと思ったけれど、今の時代の歌かな。
 そんな歌を覚えている人は、そいつを思い出して、風呂の中で口ずさむといいかもね。

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不況報道に飽きた! への7件のコメント

  1. TJ より:

    今回の経済問題は・・・元はアメリカのサブプライムと言っていますが、大体にして経済じたい実際に流通しているお金以上の金額が数字だけで動いているのですからどこかで腸閉塞を起こせばパニックですよ!! 
     メディアが好きな「エコノミスト」は銀行関連か株屋ですから流れの中での意見だけですからあてにはならないです。株価の説明も上がれば『地合がいい』とか下がれば場、全体の力がない・・・彼らの予想が当るなら誰も損しません、競馬の予想と同じですね♂ 今後は不景気に飽きてプラス思考を国民に持たせることを出来る政治策を出せる政府があれば・・・!?ですかね。
    今の日本はよその国に大金出して外面よくするのが好きで、食料に関しても自給率50%目指すとか言いながら輸入に対してもWTO農業協定なんぞでも力弱いですね。。

  2. Dreamin' より:

    僕もテレビや新聞などを見ていて、町田さんと同じことを感じていました。
    今のマスコミは、「火事だー、火事だー」と叫んでいる野次馬と変わりありませんね。
    報道するべき事柄は、他にたくさんあるはずです。
    出来事の表面だけを切り取って、上辺をなでるだけのニュースは聞き飽きました。
    こういう時代を生きるには、情報を切り捨てることが重要かな?と感じています。
    世間の出来事にアンテナを張りながらも、自分のできることに注力していく。
    悲観的に物事を捉えれば、キリがありません。
    世の中はこんなだけど、自分のところは何とかしてやろう!
    矛盾していますが、このような開き直りともいえる”図々しさ”が必要かもしれません。
    情報に振り回されるのではなくて、賢く情報を扱える人間になろうと思います。

  3. 町田 より:

    >TJさん、ようこそ。
    本当に、日本の政治力が今ほど試されている時代はないように思いますね。食糧の自給率は今40パーセント。農作物に限って言えば、3割を切っているのではないでしょうか。農業がこれからは国内産業のキーになるぐらいに覚悟がないといけないのかもしれませんね。
    経済問題に明るいTJさんと同じ視点を共有できたことはうれしく思います。
    確かに、メディアが好きな 「エコノミスト」 の方々は頼りになりません。株にも投資にも疎い私ですら、「何言ってんだ、こいつ?」 ってな人が見受けられますよね。
    株価を動かしているのが、きわめて人間くさい情緒的なものであるならば、やはりここは、国民がプラス思考で乗り切れるような政治策というものに期待したいところです。
     

  4. 町田 より:

    >Dreamin’さん、ようこそ。
    今のメディアの人たちは、基本的な勉強が足りないように感じます。それは、Dreramin’さんがいみじくもご指摘されたとおり、「情報」 に頼りすぎているからですよね。自分で考えようとしていない。
    だから 「情報を切り捨てることが重要」 というご指摘は、本当にその通りだと思いました。
    社会現象をどう見るかという基本的なフレームさえしっかりしていれば、必要な情報というものは、意識しなくても向こうからスゥーっと近づいてくるように思うのです。
    >「世の中はこんなだけど、自分のところは何とかしてやろう」 という姿勢は大事だと思います。
    結局、そうやって誰もが自分の責任をまずまっとうしていけば、結果的に、それが隣人を救うことにもつながっていくように思います。
     

  5. 北海太郎 より:

    町田さんの言われるようにマスコミは「変」です。ある意味危機感を感じているのかもしれません。これだけネット社会が広がってテレビという言葉自体が消えていこうとしています。そんな中の喘ぎかもしれないですね。それにしても揚げ足とりがうまいというのか、なんというのか、開いた口が塞がりません。みんな厳しいと言っていますが、ちゃんとご飯食べて、また次の日の為にちゃんと寝て、住むところもあって、というぐらい、後は他の人たちの悪口というのか批評というのか、あぁ、日本人はこんなにもマスコミに洗脳されて一億、ひょうろくだまになってしまったのですね。私の住む、北海道だって、自給率150%ですよ!ただ、首都圏に住む方にとっては非常に厳しいことだと思います。都会はお金が無いと暮らせませんので。私も実感としてあります。移動にもお金、食べるにもお金、全てお金社会です。それを煽るかのような報道、先日、BSを見ていてプロディユーサーだった横澤さんが出ていました。彼はたまにいい事を言うのですが「そんなもんだという常識」を疑う。
    期待せず、信頼する。これは期待をすると人間、頭に乗るそうです。そして自分は無能だということを知るべしと言っておりました。まさに今の日本にぴったり。実際お金の無い人(自分も含めて)は本当になんとかしなければと思い、もがき苦しみ、結局は大変な事になってしまうのが多いです。でもこれって大昔からそうでしたよね。歴史が物語っています。そして、お金のある人は何もせず、見向きもしません。まぁ、報道のほうできつい、厳しいぞーと吠えているので大変な事なのかも知れないくらいに思いますが。自分の周辺もあまり厳しいとは言いますが、生活ができないという言葉は聞いたことがありません。なぜなのでしょうか?すごく不思議です。70過ぎの人たちに聞いたら一番良く答えてくれます。今の世の中おかしいですよね?とおかしいと答えるけれど、知恵がない、お金そんなに沢山ほしいの?お金の使い方が今は違うよなと声を揃えて言います。結構身近いところで答えはあるのですね。そんな事を聞いてほっとしていますが、ある意味、報道も恐ろしいです。北海道の田舎の食堂のおばちゃん達も経済不況だなんて、自分達が本当に中心にいるような気で話しているのを聞くとさらに思います。

  6. 北海太郎 より:

    すみません、北海道の食料自給率1100%でした。訂正いたします。

  7. 町田 より:

    >北海太郎さん、はじめまして。
    テレビ、新聞、週刊誌という既成のマスメディアが、どれもネット情報がますます充実していく中で危機感を募らせているのは、ご指摘の通りだと思います。
    確かに、マスメディアの中で発言する人たちの中には、さすがに世の中を冷静に分析して、説得力のある発言をされる方も多くいらっしゃいますが、ネットでは、ほとんど素人だと思えるような人たちが、何の苦もなく充実した発言をしている状況をよく目にします。
    すでに 「情報」 の分析という意味では、ネット系の方が進んでいるという感じがしないでもありません。
    北海太郎さんがおっしゃるように、メディアの人たち…特にテレビのワイドショーなどで 「危機意識」 を煽るような人たちの中には、庶民の生活感覚では想像もできないくらいお金を稼いでいる人たちもたくさんいらっしゃいますよね。そういう人たちが政治批判や企業悪を追及したところで、「どれだけ本気で言ってんの?」 と疑わしい気分になることもあります。
    ワイドショー的な政治・経済感覚で世の中を見ていても、結局は “上っ面” を撫でて終わりという感じで、なんか虚しいですよね。
    北海道からの、生の手応えを伝えてもらえるコメント、ありがとうございました。
    いろいろと考えるヒントをいただけました。
    今後ともよろしくお願い申し上げます。
     

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