リンエイプロダクトの車造り

 
 バンコンのトップメーカーとして揺るぎない地位を確保している 「リンエイプロダクト」 。
 だけど、「バンコン」 という言葉が、この会社の造るクルマにふさわしいのかどうか、ちょっと戸惑うことがある。
 漠然と 「キャンピングカー」 という言葉を使ったとしても、リンエイというビルダーの開発するクルマそのものを十分に表現しきれていない。
 

 
 正直に書くけれど、私が年に1回発行している 『キャンピングカーsuperガイド』 という本で、いちばん記事を書くのに苦労しているのが、このリンエイさんのページなのだ。
 
08ガイド表紙
 
 普通だったら、「ベース車が何で、レイアウトはこうで、内装材がこうだから軽量化が図られて…」 ってな感じで、法則どおり書けば、いちおう1台紹介できてしまう。
 しかし、リンエイさんのページ構成はそうならない。

 「 × × シリーズのフロアプランの基本形はこうだが、○○というクルマは△△になっていて、□□の場合は◇◇で…」
 
 ベース車、レイアウト、装備、内装材が複雑に交差する無限のバリエーションが用意されていて、ひとつの車種に絞り込んだ解説ができないのだ。 
 だから、このビルダーさんのページだけは、例外的にフロアプラン図が七つも八つも載ることになり、「全長・全幅・全高」 を明示する欄には 「車種によって異なる」 という言葉が入り、画像スペースには、すべて異なる車種が1コマずつ掲載されることになる。
 
 いったいリンエイプロダクトとは、どういう開発思想を持ったビルダーさんなのだろう。
 11月初旬に東京のお台場ショー会場で、
 「ちょっと、ちょっと」
 と、私を呼び止めた田辺二郎社長が見せてくれたのは、新型バカンチェスに取り付けられたリヤゲート用 「イージー・ドアクローザー」 (op.) だった。
 
 リヤゲートのイージー・ドアクローザーというのは、ハイエースの場合GLやスーパーGLにも設定がない。
 田辺社長が自慢したがるのも十分うなづける。
 この機構を開発する前に、同社はすでに、本来なら標準設定のないハイエースDX用として、スライドドアのイージークローザーを開発している。このリヤゲート用のものは、その “進化系” モデルともいえるものだ。

 で、田辺さんがリヤゲートに手を触れる。
 すると、途中までバシャっと下りていたドアが、閉まる寸前にスローモーション画像のように速度を落とし、一呼吸おいて … カシャリ … と吸い込まれるようなタッチで閉じていく。
 救急車やウェルキャブだけに採用されている機構なのだが、リンエイはその純正部品を使って、自社開発したのだという。
 
 こういうことを、あっけらかんとやってしまうビルダーなのである。
 この会社の造り出すバンコンを、単なる 「バンコン」 と言い切ることへの戸惑いを、少しは伝えることができただろうか。
 
リンエイ田辺社長
▲ 田辺社長

 田辺社長はいう。
 「ビルダーなんだから、車内をよく作っていくというのは当たり前。
 でも、うちは、ベース車そのものも豊かにしていくという発想を常に持っているんですよ。
 お客様にとっては、クルマ全体がひとつの道具なのだから、乗り心地の追求や走行安定性の確保から始まり、室内の温度コントロール、乗降性の向上、収納機能の充実 …… もう、ありとあらゆるものに対して気を配っている」
 
 そう言いながら、田辺さんが、次に見せてくれたのは、セカンドシート裏に設置されたヒーターコック。
 お尻の下に熱が溜まるのを防ぐため、リヤヒーターの温水量を調節できるコックを設けて、室内温度をコントロールできるようにした装備だ。
 

▲ リヤヒーターコック。向こう側の赤いコック

 このような手の込んだ機構も、リンエイでは、ルーフやサイドパネルと内張りの間に発泡ウレタンを貼り付けた断熱処理加工と同じく標準装備にしている。
 そのほか、センターウォークスルーボード、アシストグリップ、つかまりん棒、ヘッドレストホルダー、リヤヒーターの移設などなど…。
 リンエイのバンコンには、使い勝手を向上させるための緻密なアイデアがすべて具現化されて、そのほとんどが標準装備になっている。

 この標準装備された機器類や装着可能なオプション類の組み合わせを、他社のバンコンの中に探し出すことは難しい。
 リンエイのクルマは、単なるハイエースをベースにしたキャンピングカーという域にとどまってはいないからだ。
 
 もちろん、メーカーの開発したワゴンともまったく異なっている。
 そのような、あらかじめ設計図が描かれているような世界から、このクルマは生まれていない。
 しいていえば、自分の意志をもって、自分で進化を遂げていく 「生物」 のようなクルマなのだ。
 
 その進化は、時に、あるオーナーの気まぐれなレイアウト変更の相談から始まる。
 あるいは、車中泊を楽しむ田辺社長の酒に酔ったひらめきから生まれる。
 リンエイで開発される数々の便利グッズというのは、すべて誰かの実践過程の中から、現場の感覚に鍛えられて生まれてくる。
 そのなかには、若いときからキャンピングカーを造り続けてきた田辺氏の年齢の変化を反映したアイデアも次々と加えられていく。
 たとえば、車内への乗降性を向上させるアシストグリップのたぐい。
 

▲ アシストグリップ (左) とつかまりん棒

 これなど、車内と車外をジャンプしながら行き来していた若い頃の田辺さんだったら、着目していなかった装備類だろう。
 以下、リンエイ便利グッズの数々を画像でご紹介。
 

▲ ヘッドレストホルダー。ベッドメイクのときに抜いたヘッドレストも、こうして収納する場所があるととても楽 (標準装備)。


▲ すでに、おなじみのスライドドア用 「電動ステップ」 (op.)。


▲ 旅行中に発生したゴミを取りまとめて収納する 「ゴミ楽(ごみらっく)」 (op.)。

 
▲ 「リンエイ」 のロゴ入りグラス・食器セット (限定op.) 。こういったアイテムを揃えているのが同社の凝ったところ。「リンエイ」というブランドが、単なるクルマのネーミングを離れて、ライフスタイルを意味するまでに広がっていることが伝わってくる

 このようなアイテム以外にも、走行性能を向上させるオプション類としては、ソフトライドサス、リヤスタビがあり、快適な車内環境を維持するための装備としては、リヤクォーターウィンドウ、電動サイドオーニング……等々。
 
 いやぁ、もう書ききれない。
 欲しいと思えるモノは、なんでも取り出せるドラエモン的なクルマ。
 それを、田辺社長は、
 「1台 3役のクルマ」
 という。

 「1台のクルマを買うと、使用目的に応じてワゴン、カーゴ、キャンピングカーに早変わりするのがうちのクルマなんです」
 と田辺さんは言う。

 機能的な分類法に従って言い直せば、「乗れる」 「積める」 「寝られる」 。
 この機能は全車に共通して備わっているものだが、ユーザーの家族構成を軸に分類し直すと、鮮やかなキャラクター分けがなされていることも分かる。

 ファミリーユースに適したキャラクターを持つものは、「ベーシックシリーズ」 。
 子育てが終わったシニア夫婦に適したものは、「ふたりのくるま旅」 。
 さらに、そのシニア夫婦が、お孫さんを伴った旅を楽しむ場合は「エクセレントシリーズ」 。
 
 複雑多岐に渡るような商品構成も、このような用途別に分類してみると、分かりやすくセグメントされている様子が見えてくる。
 とにかく使う人間が、使う立場に立ったときに初めて合点がいくのが、リンエイという会社のクルマなのだ。
 リンエイ商品をレポートするときは、記者もまた自分が買うことを想定しながら細部を見ていかないと、見逃してしまうところがたくさんある。
 しかし、そういうクルマだからこそ、同社のバンコンは、いろいろなバンコンを研究した顧客が最後にたどり着くクルマという評判を得ているのかもしれない。
 
   

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