「七人の侍」

昔の映画の現代的鑑賞法 12
「七人の侍」
 
七人の侍ポスター
 
 この休日、BS で放映していた『七人の侍』を、またまたまた観ちゃった。
 「また」が3回続いたけれど、本当はもっと観ている。何度観たか自分でもその正確な数が分からない。
 
 収穫期に必ず来襲する野武士の侵攻に怖れをなした村人たちが、村を自衛するために侍を七人雇って、野武士と対抗するという映画なのだが、話そのものがあまりにも有名で、ハリウッド西部劇の『荒野の七人』などというリメイク版も出たから、ストーリー展開がどのようなものであるか知っている人も多いと思う。
 
 自分の場合は、登場人物たちのセリフまでほぼ覚えているので、正直、もうドキドキ感というのはないけれど、何度観ても、唸ってしまう。
 ここには活劇映画のすべてが凝縮されている。
 
七人の侍1
 
 CG 処理が高度に発達した今のハリウッド映画などに比べると、確かに、活劇そのものの迫力は遠く及ばない。
 だけど、リアリティというところに着目すれば、その後に出てきたどんなアクション映画も、ここで実現された活劇のリアリティの前では色あせてしまう。
 つまり、ここには「人間」が描かれている。
 
 たとえば、こんなシーン。
 剣を振り回しながら馬を疾駆させて村に乱入する野武士に、村人たちは最初は怖れをなして逃げ惑う。
 しかし、その野武士が落馬したと思いきや、一転して、彼らは狂気に駆られたように竹槍を振りかざし、惨殺の雄たけびを上げる。
 
 そこに描かれた村人たちの弱さと、ずるさと、醜さ。
 というか、「人間」そのものの弱さと、ずるさと、醜さを画面は正直に伝えてくる。
 そして、立場が逆転すると、情けないほどうろたえ、逃げ惑い、命乞いする野武士の悲しい姿。
 観ているとやりきれなくなるくらい、人間の弱い部分が描かれている。
 
七人の侍3
 
 切られた腕が宙を飛ぶこともない。
 槍が内臓を抉り出して、臓腑が飛び散ることもない。
 最近のハリウッド映画の戦闘シーンでよく見られる、「過剰なリアルさ」というものはここにはない。
 
 なのに、腕を切られた痛さ、槍が突き刺さった苦しさが、観客に「痛覚」として伝わってくる。
 ハリウッド活劇の戦闘シーンが、どんなに残酷な映像を写そうが、どこかスポーツのような軽やかさを伴っているのに対し、ここには「戦闘」がある。
 だから、生き残った人々の死者を哀悼する気持ちや、生き残れたことに対する安堵感がリアルに伝わる。
 
 CG の発達は、この世にありうべき映像を、あたかもこの目で見ているような鮮明さで伝えてくるが、それは視覚情報を充実させただけで、「痛み」、「悲しみ」 、「憎悪」は伝えてこない。
 黒澤明監督の映画、とりわけこの『七人の侍』は、奇跡的に「痛み」、「悲しみ」、「憎悪」を戦闘シーンに盛り込めた稀有な作品のひとつだ。
 
七人の侍2
 
 終わり方も秀逸。
 野武士を殲滅して平和を取り戻した村では、太鼓と笛の音に合わせて、田植えが始まる。
 村人たちのはしゃぎぶりを見つめる生き残った 3人の侍。
 
 「また負け戦だったな」
 と一人がいう。
 「勝ったのは俺たちではない。あの百姓たちだ」
 有名なセリフだ。
 
 野武士が消滅し、村の平和を取り戻した村人たちに、もう侍たちの存在は眼中にない。
 村人たちにとって、あの戦闘は、結局は「祭り」だったのか。
 
 生き残った 3の侍の心を領する徒労感と喪失感。
 ここにはハリウッド映画的なカタルシスはない。
 つまり宿題を渡された形で、観客は置き去りにされる。
 
 この映画に描かれた戦闘って何だろう。
 戦争って何だろう。
 
 その宿題の解を求めるために、また観てしまう。
  
 

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「七人の侍」 への4件のコメント

  1. より:

    いやー、ほんと最高です、この映画。
    侍の個々の強さと、農民の集団的・本能的したたさの対比も面白いですね。
    個々のキャラ立ちもいいし、坂を疾駆し迫る馬上の野伏せりとの戦いなんかほんと迫力あってかっこいい!
    一騎一騎つぶしつつも、見方も同様に死んでいく「正義の味方は無敵」でないリアリティ。
    私もまた見直してみたくなりました~!
    次のツアーにDVD買って行こうかな。。

  2. 町田 より:

    >雷さん
    いろいろなツァーを続けられ、お疲れ様でした。
    いい思い出をたくさん残されたようですね。
    ところで、この映画、ホントに最高ですね。確かに俳優さんたちのキャラ立ちが絶妙で、みないい表情をしていました。ほとんどの方がもう亡くなられたわけですが、昔の役者さんは存在感がありましたね。
    野武士たちが崖を下りてくるシーンもカッコよかった。
    まさに和製西部劇でしたね。

  3. より:

    片貝まつりに行くことがキャンピングカーを手に入れる最大の目的だったので、大げさですが、ひとつの夢がかないました~!
    カミさんと学校の子供は置き去りでしたが。。

  4. 町田 より:

    >雷さん
    念願がかなって良かったですね。おめでとうございます。
    >「カミさんと学校の子供は置き去り…」。
    たまには、そういうことも良いですよ。自分だけの夢を実現させるためにキャンピングカーを使うということも、家族を楽しませてあげることと同じくらい大切なことです。私もよくそんな風に使っていますので。

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