ケータイ小説流行

 
 今ちょっと面白い本を読んでいる。
 『ケータイ小説のリアル』 (杉浦由美子氏・著 中央公論新社) 。
 
ケータイ小説のリアル
 
 こんな書き出しに興味を持った。
 「電車の中で雑誌や文庫を読んでいる人が、最近めっきり少なくなった。代わりに登場したのが、携帯電話の画面操作に没頭する人であり、携帯ゲームを手にしている人だ」
 
 私もまた電車通勤人間だから、こういう光景をずっと眺めてきた。
 本を出す仕事をしているわけだから、そういう情景はさびしいと思うこともあるし、また 「時代の流れだからしょうがないな…」 という冷めた思いもある。
 
 しかし、この本では、携帯画面を見続ける人たちが、そこで小説を読み、あるいは小説を書いているという状況を伝えている。
 それが昨年あたりから話題になってきた 「ケータイ小説」 。
 携帯サイトにアクセスすれば誰もが無料で読め、書き手もまた携帯電話を使って書くという小説だ。
 そして、それを書籍化したものが、本としてもベストセラーになるというのが、このジャンルの特徴である。
 
 2007年度の出版流通大手 「トーハン」 の発表した年間ベストセラーでは、単行本・文芸部門で、ベスト1位から3位までを 「ケータイ小説」 書籍が独占したという。
 
 それらの小説を書いているのはプロの作家ではない。一般の若者が中心である。
 だから、文章もつたなく、ボキャブラリーも乏しい。
 プロの編集者の中には、そういう書籍が売上げの上位を独占することを苦々しく思う人もいる。
 
 しかし作者が、読み手の若者たちとほぼ等身大であることが親近感を生むのか、これらの 「ケータイ小説」 の読者層は若者を中心にどんどん広がっている。
 
 権威ある文芸賞を取った作家の小説が3,000部ぐらいしか刷られないような時代に、成功したケータイ小説の代表として挙げられる 『恋空』 は、発売わずか1ヶ月で100万部のセールスを記録した。
 
 今やケータイ小説作家の予備軍はものすごい数を擁している。
 『恋空』 は、携帯サイトの 「魔法の i らんど」 で多くの読者に支持されたことがブームのきっかけとなったが、このサイトに書き込まれたケータイ小説のタイトルは100万タイトルにも及んでいるという。
 
 著者の杉浦氏はいう。
 今までの活字文化が、「読む消費」 に支えられてきたとしたら、ネットや携帯サイトは 「書く消費」 を生み出したと。
 
 誰でも小説が書ける時代。
 それは、文芸のプロが必要とされなくなった時代でもある。
 小説のプロと編集のプロたちが作り出してきた文芸誌の 「権威」  を必要としない、新しい書き手と読み手が育っている。
 
 今朝ほどのテレビを見ていたら、かつて人気を誇っていた雑誌類が、次々と廃刊および休刊を発表したことが告げられていた。
 そのなかには集英社の 『月刊プレイボーイ』 誌、講談社の 『月刊現代』 などという大手月刊誌の名前も出ていた。
 どういう時代になるのかなぁ…。
 興味深くもあり、不安でもあり…。
 
 
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ケータイ小説流行 への4件のコメント

  1. ムーンライト より:

    私も書こうかな?携帯小説。
    冗談ですけど。
    書くとしたら、題材はあのシンガーしかありませんしね。
    先日お送りしたブログの女性とはディナーショーの会場で初めてお会いしたのです。
    それなのに「ウチに泊まってくれれば良かったのに」。
    その方へはコメントだってそれほど書いていなかったのに何故こんなに信用してくださるのかと不思議に思いました。
    よく考えたら、私への信用というより、大木さんへの信用なのではと思いました。
    この方は大木さんと会ったことがあるからです。
    私もほんの少しですが大木さんとお話をしたことがあります。
    何と言ったらいいか。
    何かフワ~ッと包まれるような・・・大きな人間。
    機会がありましたら、是非お会いになってください。
    凄い方ですよ。

  2. ブタイチ より:

    >等身大であることが親近感
    なるほど!
    文芸賞をとった作品も
    テーマが奇をてらっているように思えたり…
    リアリティに欠けているように思えたり…
    ってありますからね~。
    >文芸のプロが必要とされなくなった時代
    「ケータイ小説」が権威ある文芸賞をとったり
    文芸賞の中に、ケータイ小説部門ができるんでしょうね?
    >『月刊プレイボーイ』 
    学校にエロ本持ってくる生徒はいなくなりましたね~(笑)。車の本も教室で見ることはない。
    もっと言うと…洋楽に興味を持つ生徒もクラスに1人か2人ですね。
    盲目的に外国に憧れることもないので…アメリカ好きの担任が…気づくと…浮いていることもよくあります(笑)。

  3. 町田 より:

    >ムーンライトさん
    >「初対面の人同士でも、お互いにその人格を信頼し合える瞬間がある。それは、その2人が共通して尊敬している人物がいることを認め合えたから」 。
    あ、そういうことってある! 
    …と思いました。
    人への信頼というのは、結局、「人と人の連鎖」の中から生まれるように思います。ある人間を好ましいと思う感情は、それまで培ってきた様々な価値観、美意識、倫理観など複雑な因子が交差する中から生まれてきます。
    だから、好ましいと思う人間を共有し合えるというのは、その人と価値観、美意識、倫理観などに多くの共通点があるということですよね。
    そういう一致はよくありそうに思えて、なかなかないことかもしれません。
    いい出会いでしたね。そういう出会いを可能にする大木さん。大木さん自身の大きさというものも確かに伝わってきます。

  4. 町田 より:

    >ブタイチさん
    「ケータイ小説」 というのは、実は読んだことがないのですが、本屋でパラパラ立ち読みだけしてみると、行間の空け方や字配りというのが、きわめてネット的なんですね。
    それに、言葉を選ぶ感覚もネット的。携帯のメール感覚で書くのだから当然でしょうけれど、まさにネットの時代に対応した文学だという印象を持ちました。
    新しい時代が来ているな…と思うこのごろです。
    私たちの若い頃、『月刊プレイボーイ』 の豊満なアメリカ女性のピンナップフォトというのはすごく刺激的に見えましたね。でも、今の若い人たちにとって、それは欲望の対象とはならなくなったということなんでしょうね。
    確かに、書店の車雑誌コーナーに行っても、立ち読みしているのはオヤジばかり。
    それにJポップが洗練されてきて、それで充足してしまうのか、洋楽を聞いている若い人も減ったように思います。
    ブタイチさんがご指摘されるように、バタ臭い洋物からインパクトを得ていたオヤジたちが “浮いてきた” という傾向は出てきましたね。
    「時代が変る」 ということはそういうことだな…と思う反面、自分はやっぱり自分が素敵だと思うことを愚直に追求していきたいと思います。
    そしたら、若者の中の数パーセントかしらないけれど、ヘソ曲がりのやつらが、フォローしてくれるかもしれないし。それでいいんだという気持ちもあります。

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