ジョン・レノン節

 
 ここのところ、またビートルズにハマっている。
 ホコリを被っていたギターを持ち出して、「ビートルズ・コンプリート」の楽譜集を頼りに、久しぶりに彼らのヒットチューンを弾き始めている。
 
 突然のビートルズぐるいに、うちのカミさんは何が起こったのか分からず、ポカンと口を開けたまま状態。
 「たまの休みなんだから、家に閉じこもってギターなんか弾いていないで、お日様の当たるベランダに出て、溜まっている洗濯物でも乾したらどうなの」
 と、言いたいのだろうけれど、まぁ、「台所の洗い物は終えたようだから許してやっか」とばかりに、耳に耳栓を当てて、じっと耐えている。
 
 ビートルズに再び凝り出した理由は『レコードコレクターズ』 2008年7月号のビートルズ特集を読んで、「初期ビートルズ楽曲50選」を担当したライターたちの書いたレビューに刺激されたからだ。
 
 とにかく、秀逸なレビューが並んでいたのだ。
 彼らの書いていた楽曲分析を、自分もまた、原曲に触れることで再確認したくなった。
 
 で、音符……はうまくたどる訓練ができていないので、コード進行だけを見ながら曲の流れを追う。
 しかし、耳なじんだ歌ばかりなので、どこでコーラスが入り、どこで 「イェイェ!」が入るかもよく分かっている。
 
 すごいよ! やっぱり。
 せいぜい4トラックが関の山という当時のレコーディング技術で、よくもこれだけ複雑なハーモニーをあっさりとやってのけたものだ、と思う。
 
 コンポーザーとしてのビートルズの創造性というものに関しては、すでにあまたの評論が出ている。
 だけど、コーラスグループとしての力も相当なものではないんかい?
 
 今回いろいろ弾いて、歌って、あらためてボーカルグループとしてのうまさに舌を巻いた。
 リードボーカルを主にとっているのはジョンとポールだけど、好みでいうと、ジョンのあの蓄膿症気味に鼻に抜ける歌い方が好き。
 切なさが、甘い吐息となってマイクの前にポロリとこぼれ出る「ジョン節」を聞くと、背筋がゾクゾクと刺激される。
 
 いま鋭意力を入れている練習曲は、ジョン・レノンの作った「ユー・キャント・ドゥ・ザット」。
 ブルースコードを使って黒人ブルースのエモーションを再現しながら、白人ロックのテンションをうまく創り上げた曲だ。

▼ You Can’t Do That

 何度も何度も聞いた曲なのに、いつ聞いても新鮮。
 キャッチ-なミディアムテンポに乗って、ジョン・レノンが声の半分を鼻から出して、ライブハウスの壁を揺るがすような咆哮をまき散らす。
 粘るようにタメの効いたリズムギター。
 グイグイとドライブしていくベース。
 小気味よく決まるカウベル。
 
 聞いていると、気づかないうちにいつも腰が小刻みに揺れている。
 この感覚を何と表現すればいいのか。
 専門用語でいうと「グルーブ感」、あるいは「ドライブ感」。
 (オレ的にいうと、「シャキシャキ感」。) 
 
 ビートルズの音楽的な先進性とか、時代に与えた意味などを音楽理論や社会学の見地から述べた評論もたくさんある。
 しかし、そういう抽象論を語る前に、
 「ロックは生理的な快感である」
 ということを、この曲は見事に伝えている。
 歌詞の歯切れのよさも格別。
 
 I got something to say that maight cause you pain
 If I catch you talking to that boy agein …
 
 もう最初のフレーズから、よく切れる庖丁でさくさく大根を切り刻んでいくような爽快感がある。
 「イハキャッチュー、トーキントゥ、ボハッゲン」
 この歌詞のホップ、ステップ、ジャンプの華麗さ。
 ポップスはリズムで決まるということが、よく分かる。

 この曲が生まれた頃、「リバプールサウンズ」と称されたイギリス系のバンドが様々なヒット曲を出していた。
 いろいろなグループがいろいろな曲を作っていたけど、今となれば、自分がギターを持ち出して歌ってみたいと思わせるような曲はひとつもない。
 
 夕べは、一人でギターを弾いているのに飽き足らず、ついにカラオケハウスにまで出向いた。
 別のところで飲んでいた仲間とメールで連絡を取り合い、一緒に歌を歌うことになったのだけれど、彼らが来るまで、「ユー・キャント・ドゥ・ザット」ばかり一人で練習した。
 
 自己陶酔の世界。
 でも、その曲が作られてから40年以上経った今も、音楽風土も違う異国のオヤジに、いまだに「自己陶酔」の世界を与えるジョン・レノンのボーカルって、やっぱりすごい。
 
  
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ジョン・レノン節 への6件のコメント

  1. 凪子 より:

    町田さん、お久しぶりです。その後体調のほうはいかがですか?減量をされているとのこと。でもくれぐれも痩せ過ぎにはご注意してくださいね。
    体力を落としてはいけませんから。
    私は近所の公園の脇に400mのトラックがあって、歩いて調整をしています。経験上、食事を減らすだけでは駄目だったので。
    いろいろ調べた結果、脂肪を落とすには筋肉量を増やさなければいけないのだと。
    公園は夜でも気軽に歩けていいですよ。
    ビートルズ、先日の町田さんの記事、リボルバーが好きだという人は信用できないみたいなレビューに対してのお話、おもしろかったです。なぜなら、私がビートルズで一番好きなアルバムがリボルバーであるからです。だからそのレビュー、正しいこと言ってるかもしれないなと思いました。私自身がビートルズはもちろん大好きですが、いわゆるフリークではないから。
    でもリボルバーってかっこよくありません?

  2. 町田 より:

    >凪子さん
    なるほど、健康に痩せるためには運動も大切だというわけですね。階段よりはエスカレーターやエレベーターに頼りがちな私としては、肝に銘じておく必要がありそうです。
    >「ビートルズのイェ! イェ! に反応できずにリボルバーを評価するファンを信用していない」 というのは評論家の三宅はるおさんの意見ですね。
    私は、半分そうだな…とも思えるし、半分違うかな…という気分を抱いています。
    ビートルズの中で「リボルター」というアルバムはまさに過渡期的なアルバムですよね。
    一応、ライブ活動を続けていた時代の最後のアルバムということで、「初期ビートルズ」 に入れられることの多いアルバムですが、相当実験的な曲も入っていて、「後期ビートルズ」の先駆的な作品集ともいえますよね。
    リアルタイムで聞いたときは、「ビートルズも大人になったなぁ」 という印象でした。でも、その時代の自分も、そろそろガキの気分から脱していたように思えた頃だったので、妙にその音作りに共感した覚えもあります。
    このへんは、一度ゆっくり語り合ってみたいですね。立ち飲み屋か、チエさんのお店で。

  3. 凪子 より:

    町田さんが飲めるような体調でしたら、いつでも大歓迎です!まさに過渡期ですよね。でも初期ビートルズのようなシンプルさもありで一番ロックだと思うのですよね。
    今度ゆっくり語り合ってくださいね。

  4. 町田 より:

    >凪子さん
    体調は万全なんです。
    ただ、今ちょっと毎日残業っぽい仕事状況で、帰りが終電間際になっています。
    もうちょいお待ちください。チエさんの店にあるギターを借りて、歌いましょう。

  5. 桃子 より:

    ビートルズに 関して 論じても 話は尽きないし、きりがないと 思う。
    しかし 今の ソロになったポール 何十回見ても ウィングス 何十回見ても、うらやましがる事自体 本物のビートルズ 知らない人達の たわごとだと思う。あの時代の 熱気ようこそ ビートルズマニアであり それ以外評価する人は ビートルズのよさ知らない証拠。

  6. 町田 より:

    >桃子さん、ようこそ。
    とても気の合うコメントをいただき、誠に心強いかぎりです。
    ライブをやっていた頃までのビートルズが、やはり私などにおいても 「サイコー!」 なんです。
    初期のアルバムは、みな、バラードですら腰が思わず浮いてしまうような躍動感があって、もうなんともたまりません。
    あれにリアルタイムで接することのできた自分は、幸せ者だったと感じます。

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