パクる

 長年、「アドウエーブ」 に在籍された堀川克年さんが、そこを円満退社され、2008年に独立して事務所を構えられた。
 …といったって、何のことか分からないだろうなぁ。
 超ローカルな話題だし。 
 
堀川氏
 
 しかし、この堀川氏。
 キャンピングカー業界では、知る人ぞ知る、超ビッグデザイナー。
 キャンピングカー専門誌の広告制作においても、大手クライアントをたくさん抱え、日本RV協会さんに関わる仕事でも、重要なデザインワークを数多くこなしている。
 誰でも知っているところでは、このマナーステッカー。
 
マナーステッカー
 
 「(ゴミを)持ちカエル、無事カエル」
 マナー遵守を心掛けるキャンピングカーユーザーのアイテムとして、キャンピングカーに張るステッカーとしては、もうお馴染みのデザインのはず。
 
 そのほか、日本RV協会さん発行の広報誌 『くるま旅』 や 『キャンピングカー白書』、『マナーリーフレット』 のデザインも、すべてこの人が手掛けている。
 当社が発行する 『キャンピングカー スーパーガイド』 の表紙や特集読み物、中ページのレイアウトなども彼の手によるもの。
 10年来のつきあいで、うちとしても、欠かすことのできない大切なデザイナーさんなのだ。
 
08ガイド表紙
 
 そんなわけで、夕べ、キャンピングカー業界のイベント事業を行うマイクロプロモーションの村上さんと一緒に、彼の 「新事務所 開設祝いパーティ」 を都内某所で行った。
 
 明るいノリの人で、その飾らない性格が多くの人から愛されているのだが、一部の人からは 「軽いヤツ」 と見下されがちだ、と本人はいう。
 
 しかし、その 「軽さ」 が、実は、デザイン感覚の軽妙さを維持するための武器であるところが、この人のただならぬところ。 
 時代の流れを適切に切り取るデザインセンスでは、ピカイチなのだ。
 
 たとえば、韓流ドラマの 「冬のソナタ」 がブレークした年。
 堀川氏は、さっさとそのパロディをキャンピングカー会社 (デルタリンクさん) の広告に取り入れている。
 「笑いが取れる広告」 をこの業界に取り入れたのは、彼が始めてではあるまいか。
 
デルタ広告
 
 彼の口癖は、
 「いいデザインがあれば、パクるだけですよ」
 
 そうあっけらかんと言ってのけるのだが、この 「パクる」 に騙されてはいけない。
 それは、「勉強する」 の同義語なのだから。
 パーティの会場に行く前、駅の改札口で待ち合わせをした。
 
 駅前で、ビラ配りのお兄ちゃんが、彼にチラシを渡す。
 何食わぬ顔をして、さっと受け取り、チラシのデザインチェック。
 「使える」 と思ったのか、それを大事そうに自分のバッグにしまいこんだ。
 
 若いデザイナーには、
 「自分の独創性などにこだわらず、良いものがあればパクれよ」
 と指導しているのだそうだが、なかなかその意味を理解するデザイナーはいないという。 
 
 パクる前には、まずその元のデザインの良さを理解する目が養われていなければならない。
 と同時に、元のデザインを超えるアイデアをひねり出さなければならない。
 そうやって出来た作品は、似ているようで、まったく違ったオリジナル性を備えることになる。
 
 良いものを素直に 「良い」 と認める直観力。
 それって、デザイナーに限らず、クリエイティブな仕事に携わるすべての人間に共通して必要なことだろう。
 
 そういう 「素直さ」 が、堀川氏のデザインワークを支える大きな力となっている。
 
 新事務所の名前は 「PACREW (ピ-エークルー) 」 。
 「どういう意味?」 と尋ねたら、
 「PACREW = パクル ですよ」
 と、あっけらかんと笑って答えた。
 
 いや、なんとも、ものすごい 「軽さ」 を武器として戦っている人だ。
 
 

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パクる への2件のコメント

  1. ムーンライト より:

    「パクる」・・・。
    う~ん、なるほどねぇ。
    あぁ、そうですねぇ。
    ご退院、おめでとうございます。
    まだ、再開は先かと思って『キャンピングカー スーパーガイド』の歯切れの良い文章を楽しんでおりました。
    昨日、750台分の駐車場を持つ超大型書店に行きましたら『キャンピングカー スーパーガイド』が平積みでたくさんありました!
    自宅にあるのに、つい立ち読みをしてきました。(^^;)  

  2. 町田 より:

    >ムーンライトさん
    わぁ、なんともうれしくなるようなコメント、ありがとうございます。
    「自宅にあるのに、つい立ち読み」 してくださったなど、まさに編集者冥利に尽きるお言葉です。
    単なるキャンピングカーのバイヤーズガイドなのにもかかわらず、ムーンライトさんのように読み物として読んでくださる読者がいるなんて、なんと幸せな本であることか。
    ありがとうございます。

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