「用心棒」 で描かれた悪夢のような町

 
 土曜の夜、BSで放映していた黒澤明監督の 『用心棒』 を観た。
 家の中で、1時間以上テレビの前に座っていたのは本当に久しぶりだ。
 
用心棒ポスター
 
 映画は面白いね。
 この 『用心棒』 は、昔映画館で見て、10年ほど前か…ビデオで見て、今回が3回目。
 観るたびに、印象が変っていく。

 今回 「発見」 したのは音楽の素晴らしさ。
 10年程前にビデオで観たときは、音楽も演出も、やけに古臭い映画に感じられて、「往年の名作といわれたものも、時代の波には勝てないか … 」 などと思ったものだが、今は逆。
 タイトルバックがノーカットで流れてくる冒頭から、まずこの音楽にガーンとやられた。
 
 制作は昭和36年 (1961年)。
 当時の時代物映画としては、ものすごく意表を付くような音楽だったのだ。
 なんというのだろう。
 「ベン・ハー」 とか 「グラディエイター」 のような歴史映画にジャズが使われたというような印象なのだ。

 衣装も斬新だ。
 たとえば、主人公 「桑畑三十郎」 の敵役として登場する仲代達矢演じるヤクザ男は、リボルバー式の拳銃を振り回しながら、首にマフラーを巻いている。
 最初観たときは、あまりそんなところに頓着していなかったが、なるほど!
 このマフラーが、仲代達也をとびきり小粋で、切れ味の鋭いヤクザに見せる格好のアイテムとして機能している。
 
 映画のストーリーは、割とよくある設定。
 二つのヤクザ組織が対立抗争を繰り返し、客足がどんどん遠のいている宿場町に、ある日 、一人の浪人が訪れ、その両方の組織を騙しながら、最後に全滅させて町に平和を取り戻し、去っていくという話。
 話の原型は、ダシール・ハメットの 『血の収穫』 。
 クリント・イーストウッドの出世作となった 『荒野の用心棒』 もこの黒澤映画の焼き直しである。

 それにしても、昔の俳優は本当にカッコいいな、と思った。
 主人公を演じる三船敏郎も敵役の仲代達矢も、身体全身が “凶器” であるかのような切れ味を漂わせつつ、したたかで、ずるくて、一筋縄でいかない修羅場をくぐった男たちを見事に演じている。
 こういう役をこなせる現代の俳優さんたちをちょっと知らない。
 
用心棒画像
 
 それにしても、黒澤の創りあげた 「宿場町」 は異様な場所だ。
 通りはガランとして人影がなく、いつもホコリを舞い上げた風が舞っている。
 そこに姿を現すのは、対立する二つのヤクザ組織の面々だけ。
 暮す人も旅人もいないような町で、この二つのヤクザ組織はどうやって、日銭を稼いでいるのか不思議だ。

 悪夢の中に登場する無人の街。
 その荒涼とした不思議な町の風景が、なぜか観終った後も、いつまでも脳裏に残る。
 
 

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