サクシードのパル (キャンピングカー広島)

お勧めキャンカー23 PaL
 
 キャンピングカー広島さんという会社は、妙に、私が個人的に気になるクルマを造るビルダーさんなのである。
 かつては、ハイラックスにFRPシェルを架装した 「マイスタア」 というキャブコンを造っていた。
 けっこう興味を抱いたクルマだった。
 コンパクトにまとまっていて、なかなか使い勝手が良さそう。
 軽そうなので、運転も軽快な感じ。
 4WDなので、山奥のキャンプ場などに取材に行くにも頼りがいがありそう。
 スタイル的にも遊び心が横溢していて、“おもちゃ” としても楽しそう。
 一時、「次のキャンピングカーはこれでいくか…」 と決めかけていたときもある。
 
 そのマイスタアではなく、結局いまのクルマになったのは、「個室トイレが欲しい」 というカミさんの要望に従ったからだ。
 で、そのキャンピングカー広島さんが、またまた気になるクルマを出してきた。
 「PaL (パル) 」 という。
 トヨタ・サクシードにポップアップを架装したキャンピングカーだ。
 
 

 キャンピングカー
 つまり、8ナンバー登録車である。
 8ナンバー登録というのは、
 「洗面台等を利用するための床面から上方には、有効高さ1.6mの空間を有すること」
 「10リットル以上の水を貯蔵できるタンク及び洗面台等を有しタンクから洗面台等に水を供給(排水)できる構造であること」
 「大人用就寝部位は、1人につき長さ1.8m以上、幅0.5m以上の連続した平面を有すること」
 …などといった、面倒で小難しい規定をたくさん満たさないと取得できない。
 
 早い話、こんな薄っぺたな乗用車で、その要件を満たす改造を行うことは、やたら神経をつかうだけで、作る方としても割りが合わないし、それを取得したからといって、8ナンバーに対する税制上のメリットが薄れた今日、ユーザーが、かつてほどありがたがる状況でもない。
 でも、このビルダーはやってしまった。
 キャンピングカー屋としての意地、執念、チャレンジ精神がそうさせたのだろう。
 キャンピングカー広島は、ポップアップルーフの開発に独自の境地を切り開いてきたビルダーだ。
 ミニキャンパープチ、プレシャス、ピクニック。
 どちらかというと、取り回しのよいコンパクトカーをベースに選び、その居住性を、ポップアップルーフによって獲得していくというコンセプトを得意とするメーカーである。
 
 しかも、そのルーフの厚みをミリ単位で削ぎ落とし、格納時にはノーマル車の車高とほとんど変わらぬ高さまで縮める努力を続けてきた。
 その技術蓄積を、ついにワンボックスカーでもなく軽自動車でもなく、車高1.5mの乗用車で生かしてみようという気になったのかもしれない。
 

 
 実は、この話は、昨年の夏に行われた 「アウトドアフェスティバル IN 信州」 の会場で、こそっと聞かされていた。
 ショー会場で、展示車の写真を撮っていた私に、キャンピングカー広島の桑原社長が影のように忍び寄り、
 「来年の2月の幕張では、新しいポップアップを出しますよ」
 とささやいたのだ。
 「まだ秘密ですけど、ちょっと意表を突いたものになると思います」


 ▲ 桑原信幸社長
 
 そういわれて、
 「あ、そうですか」
 で引き下がるわけにはいかない。
 「え、ベースは何?」
 という話になる。
 既にバネット、ハイエース、エブリィでポップアップを試みているわけだから、“新しいもの” というのはそれ以外…つまり、ワンボックス以外のベース車ということになる。
 
 桑原さんは、本当はすべて明かしたかったのだろう。
 私を、わざわざ駐車場にまで連れ出して、
 「こういうところには、必ず1台ぐらいいるクルマなんですが…」 とキョロキョロあたりを見回し、
 「あった。アレ」
 と指さしたのが、トヨタの商用バンであるサクシードだった。
 
 私は、このクルマの姉妹車であるプロボックスをレンタカーで借りて、荷物を運ぶために、さんざん乗り回したことがある。
 安定感のある軽快な走りに、かなり好感を持った。
 商業用のバンながら、「仕事車だって楽しいぞ」 という主張を持っているクルマのように思えた。
 だから、
 「いいじゃないですかぁ! 面白そう」
 と、桑原さんと大いに盛り上がった。
 
 幕張の 『キャンピング&RVショー』 の搬入日。
 展示車が待機する駐車場でカメラを構えていた私のところに、ついに、くだんのサクシードキャンパーがやってきた。

 「ほぉ、やるじゃん」
 実はもっとぺっちゃんこで、シンプルなルーフ形状を想像していたのである。
 
 ところが、「パル」 のルーフにはなかなかの自己主張があった。
 ルーフのフロント側が左右とも、微妙に盛り上がっている。
 風の抵抗を計算し、整流効果を導き出すために採られた形状だと聞く。
 空力的なことはよく分からないのだが、霊験あらたかな感じがする。
 …というより、これが斜め後方から見たときのパルのフォルムを、やたらセクシーな感じに見せている。
 コカコーラの瓶のくびれもそうだが、流れるような微妙なラインを持つ造形というのは、人間の潜在意識に、ある種の好ましい胸騒ぎを起こすものらしい。
 
 このルーフのおかげで、パルは、商業用バンから一気に脱皮して、カジュアルな 「遊び車」 に変身した。
 このクルマのキャラクターを、ルーフ設計を担当した桑原健一氏はこう語る。
 
 「ONの日はビジネスキャンパー、OFFの日はカジュアルキャンパー」
 
 つまり、仕事モードがスイッチオン状態のときはビジネスユースに最適で、そのスイッチがオフとなる休日は、遊び車になるという意味。
 製作の現場にいる人は、さすがにうまいキャッチを思いつくものだ。
 乗用車ベースのライトキャンパーを、桑原社長はなぜ開発する気になったのか。
 
 「一番の狙いは若い人。それともうひとつ。団塊の世代ぐらいの人のなかには、キャブオーバートラックやワンボックスをかたくなに嫌う人がいる。
 ローレルとかマークⅡしか乗らんとかね。そういう人たちは、ドライビングポジションが乗用車でないと、それだけで落ち着かない」
 そのような徹底したアンチワンボックス派にも、車格は違うけれど、これなら抵抗はないだろう。
 …と、桑原氏は踏んだ。
 
 動力性能、ドライビングポジション、ランニングコスト。
 それらを総合的に考えると、サクシード/プロボックスはなかなか魅力あるクルマだ。
 まず、走りが機敏である。
 それも、ドライバーにストレスをかけないように…という、仕事車に徹する思想から生まれた 「機敏さ」 なので、その素気なさが、逆に信頼感につながる。
 
 「なによりも燃費がいいので助かる」
 と桑原氏は、広島から幕張まで走ったときの燃費の良さに驚く。
 荷物を大量に積んだ2人乗車。
 それで制限速度を……ほど上回るクルージングを続けても、実測燃費は16.7リットル/km。
 ガソリン代が高騰している折り、燃料代に負担がかからないことは車選びの大事なポイントのひとつになるだろう。
 努力して8ナンバーを取得した成果はどのように上がったのか。
 
 まず、車検対策上のメリットとして、(バン車両で考えると) 毎年ごとの車検から2年ごとの車検に移行することができた。
 (※ サクシード・ワゴンと比較するならば、最初の車検までに3年の猶予があるワゴンが有利)
 また、車体が軽いので、重量税も25,200円と普通のキャンピングカーよりも低め。
 もちろん、同じ重量の乗用ワゴンよりもはるかに安い。
 
 排気量も1,500cc未満なので、自動車税も27,600円と安い。
 構造的には、当然、シンク、コンロが標準装備となる。
 そのため、給・排水タンクも、魔法のようなワザを駆使して設定されている。
 「お飾りのようなシンクは要らない」
 という人は多いが、私のような清潔好き (?) の人間には、寝る前に顔を洗ったり、手を洗ったりする空間がないと、妙に落ち着かない。

 
 
 シンクでスペースを取るよりも、ベッド面積を少しでも広げたい…という声が多いことも分かるが、どうせ私などは、独り旅がメインで、せいぜいときどきクマ (別名カミさん) が乱入するくらいだから、小振りなシンクならば気にならない。
 パルでは、このほかにサブバッテリー、走行充電システム、メイン・サブの電圧を確認できるボルトメーター、AC100V外部入力コンセント、マット格納タイプの2段ベッド、折り畳み式ちゃぶ台なども標準装備となる。
 
 ポップアップルーフのテント部分は2重構造になっていて、インナーには、メッシュタイプのスクリーンテントが付く。
 夏などは、風通しのよい場所にクルマを止め、車内に風を入れながら、ちゃぶ台の前にあぐらをかいて、冷たい飲み物などを飲んだら快適だろう。
 お値段は、
 2WD・5MT 2,709,000円
 2WD・4AT 2,787,750円
 4WD・5MT 2,919,000円
 4WD・4AT 2,997,750円
 
 

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サクシードのパル (キャンピングカー広島) への8件のコメント

  1. matsumoto より:

    おっキャン広ですね。私も大好きです。今度のPalにもやっぱりありましたか、セクシーなライン。私のアスクもそうなのですが、FRP部分のラインのこだわりが好きです。微妙に主張があって、常にデザインコンセプトが明確に伝わってくる。あんな田舎にありながら(ぶち失礼!!)、こだわりの部分は絶対に外さないんですね。地産地消、私も広島県人。これからも応援します。私はまだ当分、キャブコンが好きです。ホントはバスコンがいいのですが。あと15年くらいしたらこのPalのようなクルマにしたいなあ。

  2. hoso より:

     いつも分かりやすい解説ありがとうございます。
     この車のことを、当初聞いたときはなぜ8ナンバーにしたのか疑問でしたが、8ナンバーなりのメリットと狙いがあったんですね。
     「ドラ イビングポジションが乗用車でないと、それだけで落ち着かない」と言うのも少し解る気がします。
     一般的に慣れない車のドライブは気を使うと思いますが、普通車から乗り換えられた方も、この車ならすぐにドライブが楽しめそうです。
     キャンピングカーは走らない車、のんびり走る車なので、キャンピングカーを買ったら「走りは我慢」と思われている方も多いと思います。
     ですが、長距離旅行では、移動の割合が多くなります。「せっかくキャンピングカーを購入したのなら、ドライブも楽しくなければ」と私は思います。

  3. hoso より:

    申し訳ありません。
    「キャンピングカー」が「キャンピングー」になってしまいました。m(_ _)m

  4. 町田 より:

    >matsumotoさん
    キャンピングカー広島さんというビルダーは、ほんとうにこだわりを持たれている会社ですね。かつて、matsumotoさんが乗られているトラベラー・アスクを取材したときも、「えぇ!? そんなところまでぇ?」 …という細かい部分への仕上げのこだわりは大変なものでした。
    今度のPaLなども、発想は大胆、仕上げは慎重。
    誠実なビルダーさんだと思います。
    同じ広島にお住まいとのこと、応援してあげてください。

  5. 町田 より:

    >hosoさん
    ドライビングポジションというのは、慣れの問題もあるのでしょうけれど、やはり乗用車に乗りなれた方が、キャブオーバー型の車両などに乗ったときは、相当の違和感を感じるでしょうね。でも、慣れてしまえば、これはこれで、視界が高くなるので楽なのですが。
    PaLというのは、乗用車が好きな方のファーストカーとして使えるクルマですね。そして、週末はそのまま遊びに行ける。
    キャンピングカーとしては、ニッチなところを狙った設定ですが、先に登場したミスティックさんの 「ファー」 と並んで、乗用車で遊びたい人たちからは注目されそうな車種です。

  6. 町田 より:

    >hosoさん
    「キャンピングー」の件、了解いたしました。
    お気遣いなく。
    コメント原稿は修正しておきましたので、よろしくです。

  7. a_aji より:

    初めてコメントさせていただきます。
    > どちらかというと、取り回しのよいコンパクトカーをベースに選び、
    まさにそこ、だと思います。運転の苦手な奥さんが運転できるキャンピングカー。2.1m制限の駐車場に入って買い物が出来る車。
    そんな条件にあったのがプチでした。お台場くるま旅で出会い、1ヶ月たたないうちに購入を決意しました。
    確かに大きなキャンカーに憧れはしますが、このサイズ、これはこれで子供たちにとっては「秘密基地」的サイズで受けています。

  8. 町田 より:

    >a_ajiさん
    はじめまして。
    プチに乗られているのですね。a_ajiさんのブログにもお邪魔させていただきました。
    ほのぼのとしたユーモアを称えた文章と、きれいな画像が張られた素敵なブログですね。
    また、お邪魔させていただきます。
    キャンピングカーは大きさだけがすべてはないですよね。取り回しの良いサイズに収まりながら、開発者の機転によって、使い勝手に優れた小型キャンパーに仕上がっているクルマもたくさんあります。
    プチなどは、まさにその1台ですね。
    今後ともよろしくお願い申しあげます。

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