ハゲタカ

 
 いやぁ、まいったよ。いまだに興奮が覚めやらない。
 NHK ドラマの 『ハゲタカ』 。
 
 今年の 2月頃に放送され、8月に再放送。そしてこのクリスマスが 3回目のアンコール放送だという。
 恥かしいけど、知らなかった。
 
 土曜日の夕方、何気なくチャンネルを合わせた NHK。
 すぐ、スイッチを切って買い物に出るはずだった。
 
 ところが、4~5分見ただけで、もう席を立てなくなってしまった。
 1話と 2話。
 あっという間の 2時間だった。
 
 翌日の日曜日は仕事だったので、3話と 4話は見逃したけれど、月曜日の 5話と 6話は、もうそのために朝からテレビの前に待機していたようなものだ。
 
 バブル経済が崩壊し、巨額の負債を抱え込んだ企業の弱みにつけこんで、不良債権を安く買い叩き、それを高値で売り飛ばすファンドマネージャーたちの姿を描いたドラマ。
 倒産、リストラなどで死に追いやられる人たちが出る一方、その姿に無慈悲な視線を投げつつ莫大な利益を得ていく人間の姿も描かれる。
 
 カネがテーマになるドラマは、人間のナマの欲望が露骨に表れるがゆえに、犯罪モノや推理モノ以上に、人間の根源的な部分が浮き彫りになる。 
 金融をテーマした傑作ドラマでは 『ナニワ金融道』 があったけれど、あれ以上に面白い。
 なにしろ、こちらはドラマとはいいつつも、平成の暗黒時代といわれた、あの 「失われた10年」 の生々しいドキュメントにもなっている。
 
 外資系のファンドマネージャーとして、「甘ちゃんの日本を買い叩く」 ために日本に乗り込んでくる日本人の鷲津 (大森南朋) 。
 それに対抗する大手銀行の芝野 (柴田恭平) 。
 
  
▲ 鷲津を演じる大森南朋さん  ▲ 芝野を演じる柴田恭平さん

 情やしがらみという日本人的感性を徹底的に排除して、冷酷なまでの合理主義を貫く鷲津。
 同じような合理主義者でありながら、企業の論理に敗れていく人間の弱さに目をそむけることのできない芝野。
 
 この 2人の対決を軸に、さまざまな企業の買収劇がスリリングに展開する。
 騙しあい、化かしあい、裏切り、出し抜き。 
 バルクセール、バイアウト、TOB。
 何のこっちゃ? 
 
 経済や金融の知識など、まったく自分にはないのだけれど、それでも、そこで展開されているものが人間の知恵と度胸を極限まで競い合う、切れば血が飛ぶ真剣勝負だということが分かる。
 
 こりゃ、タンカの切りあいのドラマだな … と思った。
 そういった意味で、深作監督の 『仁義なき戦い』 シリーズにも近い。
 『仁義なき戦い』 も、バイオレンスに満ちた映像表現が話題を呼んだけど、実はタンカの切りあいの見事さが、あの迫力を生んでいた。
 
 「広島の極道はイモかもしれんが、旅のかざしもに立ったことはいっぺんもないんでぇ! 神戸の者ゆうたらネコ一匹通さんけぇ。オドレら、よう覚えとけいや」
 「おお、オンドレらも吐いたツバ飲まんとけよ。ええな。分かったらはよ去 (い) ね!」
 … ってのが、『仁義なき戦い』 。
 
 さすがに 『ハゲタカ』 は最高学府を出たようなエリートたちのドラマだから、タンカも上品。
 
 「 ○ ○ 会社のファミリーを取締役から解任した手腕。見事でしたね。度胸もあれば知恵もある。どうです? 
うちに来ませんか。一緒に甘ちゃん日本を買い叩きましょう」 (鷲津) 。
 「俺はあんたとは違う。カネだけがすべてとは思っていない」 (芝野)
 「日本は資本主義の国ですよ。おカネを稼ぐことはいけないことですか? そのことを最初に言ったのは、あなたの方ですよ」 (鷲津) 。
 
 … (正確ではないけれど) ってな感じ。
 そして、このドラマでは、宣戦布告のようなセリフを相手に叩きつけた男たちは、みなすぐ背を向ける。
 「これで失礼します」
 
 その背中が、実に雄弁なのだ。
 相手のすがる気持ちを、容赦なく切り捨てるように、
 「お前の弱みは、お前が招いたものだ」
 とでもいわんばかりに、男たちは、
 「これで失礼します」
 と、背を向ける。
 
 このドラマは背中のドラマでもある。
 「男は背中で戦う」 ということを教えてくれるようなドラマである。
 そして、最後はあの冷酷な鷲津が、なんと…
 ネタバレになるので、ここでは書かない。この評判を聞いて、ぜったい DVD を手に入れようと思う人も出ると思えるからだ。
 
 それにしても、NHKはやるもんだ。
 こんなドラマが観られるのなら、受信料なんて安いものだ。
  

カテゴリー: 映画&本   パーマリンク

ハゲタカ への4件のコメント

  1. TJ より:

    ほんと今の世の中ですよね!!サブプライムローン問題も同じようにドラマにしてもらいたいです^^
     ↑ドラマにするには相当問題ありそうですけど・・・

  2. 町田 より:

    米国のサブプライム問題は、いったい日本にどのような影響を及ぼすのか。たぶん良いことは何もなさそうですね。
    政治問題や経済問題を真正面から扱ったドラマは、あまり視聴率が上がらないようですが、いい役者を起用して、しっかり作れば、きっと面白いものになると思うんですけどね。

  3. TJ より:

    サブプライム問題は、アメリカは日本の銀行にもお金出させようとしていますが、表向き大損した投資会社の部門によっては逆張りで大儲けしているので面白くても国のメンツもあるんでしょうね^^
    EUやインド、アラブもからみますからね~~!

  4. 町田 より:

    >TJさん
    サブプライムローンに関しては、世界的な金融危機のように報じられることが多いようですが、やっぱり逆張りで設けている企業もあるわけなんですね。う~ん……。マナーゲームの世界は奇奇怪怪です。2008年度も波乱含みの展開になりそうですね。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">