カスタムモーターサービス「ドルフィン」

お勧めキャンカー18 Dolfin

 1990年代末、「カリフォルニア・ドルフィン」(写真下)という画期的なキャブコンが登場したことがあった。
 『キャンピングカーsuperガイド』が、まだ『RV&キャンピングカーガイド』と名乗っていて、写真はモノクロだった時代だ。

 カリフォルニア・ドルフィンは、当時の人気車だったオックス、ジル、リバティ、トランクサルーン、チャンプなどと並んで、ショーの会場でも注目を集めた。
 驚異のコストパフォーマンスを発揮したクルマだったからだ。
 当時、トラックシャシーをベースとするキャンピングカーにはカムロードの供給が始まっていたが、「キャブコン」という言葉は生まれていなかった。それらは一括して「Tボディ」と呼ばれた。

 そのTボディの人気車たちは、みな400万円台から500万円台の価格で売り出されていたが、カリフォルニア・ドルフィンが提示したプライスは、なんと398万円。
 しかも、3ウェイ冷蔵庫、温水ボイラー、FFヒーターなど、当時のキャブコンの人気装備類をほとんど標準にした状態だった。

 ただ、このクルマは、インテリアのテイストが進み過ぎていた。
 当時は、合板を使っても「高級天然木」っぽいデザインが好まれていた時代で、家具色も濃い目が主流。家具扉などには、アメ車ゆずりの金モールが施されたクルマも多かった。

 そんな流れに立ち向かうように、カリフォルニア・ドルフィンの1号車は、浅めの家具色にブルー地のシートを組み合わせ、カジュアル路線を打ち出していたのだ。
 キッチンカウンターは、目にも鮮やかなホワイト。
 外板色も、うちの本で紹介したバージョンは、純白のシェルにブルーのスカートを巻いたマリンカラーだった。
 今、スポーツ志向のユーザーが見たら、とても新鮮に映るはずのこのカジュアル路線は、当時として早すぎた
のかもしれない。

 どのクルマも、掲げたプライスにかかわらず「高級感」にこだわる傾向が強いなかで、カリフォルニア・ドルフィンのスポーティ感覚は、若い人以外には理解されにくかったと思う。
 
 せっかくのコストパフォーマンスの魅力を発揮しながら、カリフォルニア・ドルフィンは、いつの間にか姿を消していった。
 ところが、11月初旬の東京・お台場のショーで、なつかしい「ドルフィン」という名を掲げたキャブコンを見ることができた。

 出展者は、やはり、あのカリフォルニア・ドルフィンを開発したカスタムモーターサービスさん。
 今回は、ボディパネルが、なんとオレンジ色のエンボス。
 こんなキャブコン見たことがなかった。

 開発したカスタムモーターサービスの鷹森社長に、FRPパネルをエンボス加工した理由を聞いてみた。
 
 「FRPパネルは、どんなに平滑性を追求しても、波打ったり、凹んだりすることが避けられません。ならば、いっそのことエンボスにすれば傷つきにくくもなるし…」
 とのこと。

 ヨーロッパモーターホームや輸入トレーラーなどには、ときどきアルミ板をエンボス加工したパネルが採用されている。
 エンボスは、確かに板そのものの強度を増すし、腰が強くなるというメリットをもたらせ、傷がついても目立たないという利点を生む。
 しかし、掃除の手間がかかるとも言われる。

 「掃除のことは皆さんよくおっしゃるけれど、ワックス効果のあるシャンプーなどで外板を洗ってもらえれば皮膜ができるので、掃除はそんなに大変じゃないんです」
 と、鷹森さんはいう。

 「いちばん理想的な掃除方法は、生ダイコンで擦ること。これでスリおろしたダイコンおろしはおいしいんです(笑)」
 「? ? ?」
 …危うく信じるところだった。

 中を見せてもらったが、今回もスポーティ路線にこだわっている。
 最大のポイントは、ガバッと大きな開口部を持つリヤラゲッジルーム。
 

 床にはシャワーパンが設けられ、天井、側面もFEPで覆われている。
 釣り、ダイビング、サーフィンなどを趣味とするユーザーを想定した造りだ。
 あいかわらず、マリン志向。
 カリフォルニア・ドルフィンの精神は、10年近く経っても健在だった。

 このラゲッジルームとキャビンの間は、扉で仕切ることも可能だが、基本的には貫通。
 カヌーなどの積み込みも想定しているからだ。

 リビングはL字ソファ。
 その上にはFRP製のオーバーヘッドキャビネットが付く。このプロトタイプでは扉が付いていなかったが、扉を付けず、ゴムのネットを張ることも想定されている。
 ただ、FRPのむき出しは素っ気ないので、革を巻いたとか。

 「むき出しのままでも、昔のデヘラーみたいな雰囲気でいいんじゃないですか?」
 と聞いてみたが、
 「いやぁ、あの雰囲気はどう頑張ったって出ないですよ。あれはFRPではなく、樹脂ですから。デヘラーみたいなクルマは、よほどお金をかけないと無理でしょうね」

 鷹森さんのさりげない一言に、ヨットメーカーの「デヘラー」が造ったキャンパーに対する彼の畏敬の念が伝わってきた。
 私もあのクルマに憧れたクチだから、あまり木工が全面に出てくるクルマでなくても構わないという気持ちが、どこかにある。
 ヨットメーカーがお金をふんだんに投入して、マリンのイメージと機能をキャンピングカーに盛り込んだデヘラー。
 形としては対極にありながら、その精神は、どこかドルフィンにもつながっているような気がする。

 このドルフィンでユニークなのは、リヤサスに標準装備されたエアサスペンション。
 エアバッグで車高を調整しようというもの。
 ラゲッジルームに重量物を積載したときの尻下がりを防ぐためである。

 売りは、このクルマにおいてもコストパフォーマンス。
 2WDの5速ミッションで、2,980,000円。
 4WDでも3,290,000円。
 かつてカムロードをベースとしたカリフォルニア・ドルフィンでは、驚異のコストパフォーマンスが話題になった。
 このクルマも、台風の目になるかもしれない。

 お台場ショーのデビューでは、まだ8分ほどの仕上がりだった。
 来年2月の幕張ショーでは完成形が出るという。
 そのときに、「ドルフィン」を名乗っているかどうかは分からないというが、でも、きっと大海を泳ぎ回るイルカのように、颯爽とした小型キャブコンが誕生していることは間違いない。

カテゴリー: campingcar   パーマリンク

カスタムモーターサービス「ドルフィン」 への2件のコメント

  1. TJ より:

    コストパフォーマンスと実用性だとこれからの時代のニーズに合いそうですね。ニューヨークにオープンした
    『無印』と同じコンセプトのようにも感じます。

  2. 町田 より:

    >TJさん
    なるほど! ニューヨークにオープンした「無印」と同じコンセプト…。そう指摘されて、ああ、なんか意味が
    分かるという気分になりました。
    選りすぐりのブランドが居並ぶニューヨークで、それに伍して戦っていくのは、コストパフォーマンスと実用性
    なんですね。
    そのとおりかもしれませんね。何の世界でもいえることかもしれませんが。
    「ドルフィン頑張れ!」と言いたくなりますね。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">