ハイウェイに合う音楽

 
 「スピードに酔う」ってのは、ある意味、人間の本能的欲求だ。
 どんなに健全な市民を自認する人だって、時には、制限スピードを振り切ってハイウェイを飛ばしてみたいという誘惑に駆られることがあるだろう。


 
 しかし、むやみなぶっ飛ばしは、安全性を損なうのみならず、石油燃料を大切にしなければならないという今の時代の精神に逆行することも確か。
 そんなとき、スピードを上げなくても疾走感を楽しめる「媚薬」がある。
 音楽だ。
 
 世の中には、時速200㎞で走らなくたって、「200㎞の気分」を味わう音楽というものがある。
 たとえば、中高年のドライバーならば、若い頃ディープ・パープルの「ハイウェイスター」などを聞きながら、高速道路を飛ばしたなんて経験を持っている人は多いのではなかろうか。

 
 
 あの風を切るようなスピード感は、時速100㎞巡航でも、200㎞気分を味わえる媚薬として機能していたように思う。
 で、私は今でも走るときは、必ず音楽付き。
 演歌から民謡、カントリー、ロック、ジャズ、R&B、J ポップなど、そのときの気分に応じて、いろいろなドライブミュージックを用意しているけれど、少し疲れて、眠いのを我慢しながら運転しなければならないような時は、やっぱり昔聞いたロックをかける。
 ま、合法的な「覚醒剤」というわけね。
 
 ただ、同じロックでも、乗用車をドライブしているときにはピッタリ合っても、キャンピングカーには合わないものもある。
 逆もある。
 
 ここから先は、ジジイとなった私の「定番ドライブミュージック」を紹介するコーナーなので、若い人には理解不能なサンプリングになっていると思うが、お許し願いたい。
 
 で、キャンピングカーのスピード感に合う音楽となると、先ほどいったディープ・パープルの「ハイウェイスター」のような曲は、はっきりいって合わない。
 その理由は、キャンピングカーの運動性能が、おおむね乗用車よりもトロいことによるが、それ以上に着座位置が影響している。
  

 
 大半のキャンピングカーの着座位置は、トラックのように高い。
 この路面とドライバーとの「距離」がスピード感を鈍らせる要因になっている。
 だから、「ハイウェイスター」のようなアップテンポの曲の場合、曲のスピードに、クルマの方が置き去りにされる。
 
 あの曲はバイクか、あるいはスーパーセブンのような、道路が身体に迫ってくるような乗り物に焦点を合わせた音楽なのだ。
 着座位置の高いクルマでこれを聞くと、かえって曲の方が間抜けに聞こえる。
 
 概してアップテンポのロックは、キャンピングカーのスピード感とは合わない(と自分は思っている) 。
 それよりも、ミディアムテンポ。
 それも、ベースとギターがユニゾンで、重厚なギターリフを響かせる音がいい。
 この重々しい “ゆったり感” が、特に、トラックベースのキャンピングカーのギヤ比と合う。
 
 ディープパープルを例に取るならば、「ハイウェイスター」がピーキーなエンジン特性を発揮するスポーツカーに似合う音だとすれば、トルクフルなトラックの走行感をサポートするのは、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の方である。
 
 私の好みでいうと、トラック系キャンピングカーミュージックの一押しは、クリアデンス・クリアウォーター・リバイバルの「ボーン・オン・ザ・バイヨー」。
 
 
 
 ギターの緊張感あふれるイントロが流れると、絶妙のタイミングで、リズム隊がそれを追う瞬間など、もうアドレナリンが大噴出!
 そして、ジョン・フォガティのエネルギッシュなヴォーカルがかぶさってくると、時速80㎞の私のコマンダーでも、気分は200㎞圏内に突入。
 
 Z Z トップもサイコ-!
 

 
 Z Z トップでは、特に1979年のアルバム「皆殺しの挽歌」に収録された「アイ・サンキュー」が絶品。元歌を歌っていたサム&デイブの音よりもドライブ向きだ。
 腹の底にネジリ込むようなドライブの利いたブギのリズムが、腹の臓腑を突き破って、脳天まで駆け上がってくる感じ。

▼ ZZ TOP 「I Thank You」

 ちょっと軽くなるが、オールマン・ブラザーズ・バンドのインスト曲は、みなドライブ向き。
 

 
 たとえば、「ジェシカ」。
 チャック・リーヴェルのピアノソロからバトンを受けて、ディッキー・ベッツのギターソロに移るあの瞬間!
 あそこで、何かが弾ける。
 そのタイミングで加速なんかしようものなら、もう射精してしまいそうだ。
 
 「レ・ブレル・イン・A マイナー」の途中からリズムが変る部分もいい。
 あれは、カムロードをもポルシェに変える。
 しかし、そのつもりでコーナリングに挑んではまずい。
 
 ブリティッシュロックの雄フリーは、だいたいどの曲もキャンピングカーのスピード感に合う。
 特に、ライブアルバムが素敵。
 あの70年代的な暗さが、なんともたまらない。
 
 
 
 「オール・ライト・ナウ」
 「ファイアー・アンド・ウォーター」
 といったミディアムテンポとスローの中間ぐらいのリズムが、意外と高速走行と調和する。
 子供たちがリヤ席で眠りこけ、奥さんも助手席で高いびきという状況の、孤独なお父さんの深夜ドライブにぴったり。
 フリーで個人的に好きな曲は、「ビー・マイ・フレンド」。
 スローテンポのバラードだが、ポール・ロジャースのヴォーカルに合わせて、アンディ・フレイザーのベースがずしんとはらわたに落し込まれると、フロントガラスにゾンビの顔が貼り付いたような戦慄が、身体中を駆け巡る(ほめ言葉ね!)。
 
 フリーの “引きずる” ような粘りを持ったサウンドは、トレーラーをけん引しているときにも似合うかもしれない。
 
 フリーを敬愛しているアメリカのレーナード・スキナードも、キャンピングカー向けのミディアムテンポの名曲を数多く残している。
 
 
 
 レーナード・スキナードは、「サザンロック」というカテゴリーで語られるグループだが、オールマンやZ Z  とは異質。
 イギリス風の暗さとアメリカ南部のアンニュイが混じりあった、独特のダルい雰囲気をかもし出している。
 お勧めは、「ザット・スメル」。そして「サーチング」。
 
 ビートルズで1曲選ぶとすると、初期の名曲「ユー・キャント・ドゥ・ザット」。
 ジョン・レノンの不良っぽいシャウトが、カウベルの小気味よいリズムに煽られて、グイグイ乗っていくところが絶妙。「ドライブ・マイカー」と並んで、ビートルズの曲中もっともドライブの利いたサウンドになっているのではなかろうか。
 
 おとなしいキャンピングカーを運転していても、やんちゃな気分になれるから不思議だ。
 Tレックスのマーク・ボランが歌う「ゲット・イット・オン」のブギリズムも、なかなかトラック系キャブコンと合う。
 
 少し時代が下った頃の音では、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「リラックス」。
 あるいは、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「パワー・オブ・ラブ」。
 そして、ブロンディの「ラプチャア」。
 さらに、シャーデーの「スムース・オペレーター」。
 
  
 
 80年代の音としては、このあたりのリズムもトラックシャシーのキャブコンと相性がいい。ただしディーゼルではなく、ガソリンエンジンの感覚だ。
 
 ブラックが奏でるR&B は、スピードを追うドライブミュージックとは合わない。
 好きなジャンルだけど、あれはダンスビートが根底にあるので、リズムに上下動感覚が残り、ハイウェイ走行の水平移動とはシンクロしない。
 R&B 系は、「飛ばす」という心境とは違う心の状態のときに、楽しんでいる。
 
 勝手なことを書いた。
 すべて個人的な趣味の話。
 古い曲ばかりで、若い人には知らない曲が多かったと思う。
 1曲ぐらい、知っている曲がありましたか?
   
  
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ハイウェイに合う音楽 への6件のコメント

  1. 磯部 より:

    初めて買ったクルマが、ホンダ1300クーペ7。このクルマ、ホンダが世に送り出した初期のクルマなので、早いが、止まらない。空冷2気筒という変わり種。第三京浜を、ヘタったショックでガタガタいわせながら、メーター読みで175キロをマークしたのを覚えている。このときの8トラで流したのが「ハイウェイスター」。全然、怖くなかったモンね!
    まさに、音楽は合法的なドラッグだ!
    で、CCRとくれば、私の場合「雨をみたかい?」と「コットン・フィールズ」を挙げる。特に「雨をみたかい?」は通称ハマ・ジル(ヨコハマ・ジルバ)を踊るときにピッタリの曲でした。
    以上、我が青春のミュージック。
    町田さんと幾らかカブっているけど、タイトル・テーマとズレていてゴメンナサイ!

  2. 町田 より:

    >磯部さん
    8トラの時代を知っているなんて、まさに同世代のご同輩ですね。あの時代、ハイウェイミュージックというと、パープルとかステッペンウルフの全盛でしたね。
    横浜では、ハマ・ジルを踊るときのバックが 「雨をみたかい?」 だったんですか? もっと黒っぽいものを想像していたので、へぇーという意外な感じもします。
    でもCCRはいいですね。「コットン・フィールド」も「プラウドメアリー」も、「ダウン・オン・ザ・コーナー」も、みなキャンプに出かけるときの、晴れた日の高速道路にぴったりです。

  3. 赤の’57 より:

    私も、ビートルズ以外ではCCR,スリードッグナイト、グランドファンク・レイルロードに青春をかぶせたクチです。
    大人になってユーミンの「中央フリーウェイ」をかけながら中央高を走るというお約束もやってしまいました…。

  4. 町田 より:

    >赤の’57さん
    ユーミンの「中央フリーウェイ」は、日本ではじめてドライブミュージックというものを意図的に追求した曲だったかもしれませんね。
    私もまた、あの時代、家から近かった調布・府中あたりのサントリー工場と競馬場を見ながらの “お約束ドライブ” を楽しみました。
    グランドファンク・レイルロードの存在を忘れていました。やはり運転しながらよく聞いていました。
    伝説となった 「嵐の中の後楽園ライブ」 を総立ちになって聞いていた世代です。…なつかしいな。

  5. 凪子 より:

    はじめまして。通りすがりに楽しげなブログを見つけてしまいました。私もアンディ・フレイザーに憧れSGベースを購入した覚えがあります。
    夏はフリー三昧になってしまいます。今年もそうでした。   
    無人島に持っていくなら~ではないけれど、ファイヤー・アンド・ウォーターですね。私は。

  6. 町田 より:

    >凪子さん
    こちらこそはじめまして。
    フリー好きは日本人に多いという話はよく聞くのですが、いざフリーが好きな人となると、実際にはなかなか会う機会がないんですよ。「ファイアー・アンド・ウォーター」の良さが分かる人のコメントをいただいてうれしい限りです。
    アンディ・フレイザーのベースは、鳥肌が立つようなところがありますよね。

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