キャンピングカー ひとりのくるま旅

  
 「ふたりのくるま旅」
 キャンピングカービルダー 「リンエイ」 さんのバンコンブランドではないが、今この 「二人旅」 が、キャンピングカー業界のキーワードになっている。
 子育てが終わった熟年夫婦が、仲良くキャンピングカーを使った長期旅行を楽しむ。
 そういう風潮が台頭し、そういう仕様のクルマが造られ、そして実際に、そういうクルマが売れている。

 … が、待てよ
 と思わざるを得ない。
 ひとつのブームのさなかで、次のブームを読むのがジャーナリストのクセである。
 「二人のくるま旅」 がさらに普及して飽和点に達すると、その次は、どんな流れが見えてくるのだろうか。
 
 『くるま旅くらし心得帳』 という本を書かれた山本馬骨さんのブログを拝読すると、次のようなことが書かれていた。
 
 「旅していると、一人旅の男性を多く見かける。連れ合いを亡くされての一人旅の方もおられるが、カミさんと考えが合わず、一緒に旅ができなくて、やむなく一人旅という方が案外多いらしい」
 
 別のところでは、こんな話を聞いた。
 
 「定年退職してさぁ、女房孝行しようと思ってキャンピングカー買ったんだよ。だけど一緒に旅行に出たら、女房こう言うんだよ。 “あんた話題のない人だったのね” 」
 
 その奥さんは、それ以降、旦那と一緒に旅行に行かないどころか、映画にも買い物にも同行することを渋るようになってしまった。
 会社勤めの時代に、奥さんに対し 「おい、お茶」 以外の言葉をかける訓練を怠ったツケが回ったのだろう。
 
 奥さんとの 「二人旅」 を実現するためには、旦那さん側の意識変革も必要である。
 話題を見つける努力、旅行中の家事の分担や、相手の自由を尊重する気配りなど、在職中には考えなかったような気遣いが要求されるようになる。
 それに失敗すると、奥さんは 「くるま旅」 から離れていく。
 そして、
 「気をつけて遊んでらっしゃいね。家のことはしばらく心配しなくていいのよ」
 と、体よく追い払われることになる。
 
 そういう 「オヤジ一人旅」 族が、ジワジワと増えている気配もあるのだが、一方、自ら求めて 「一人旅」 を楽しむ男性も増えているのだ。
 
 現に、仲の良いご夫婦としての旅行記をまとめ、「二人旅」 のメッセンジャーとして活躍されている山本馬骨さん自身が、先ほどのブログでは次のようなことを書かれている。
 
 「…実は、私は一人旅をしたいと思っている。決して二人旅に飽きたということではないのだが、なぜかこのごろ一人旅をしてみたいと思う。 (中略)
 一人旅が、二人旅の窮屈さから開放される旅だなどとは全く思っていない。
 一人旅で何か家内に内緒の良いこと (悪いこと?) をしようなどとも思ってもいない。
 にもかかわらず、一人旅がしてみたい」
 
 ご承諾もいただかないまま、勝手に引用してしまったが、「二人旅」 の達人ですら、たまに襲ってくる 「一人旅」 の誘惑には、勝てなくなることがあるようだ。
 
 先日のタコスキャンプで知り合いになった平山カッチさんも、会場での座談で、こんなことを言っておられた。
 「今日は、子供と家内は子供会のディズニーランド行きと重なって、今日は私一人なんですわ」
 「それじゃ、お寂しいでしょう」
 と私。
 「いや、ここだけの話 (笑)、気楽でいいわ」
 
 そうなのだ。
 男の一人旅には、また、それなりの気楽さというものがあるのだ。
 私は、「一人旅」 マーケットというものが、これから生まれてくる予感を強く抱いている。
 それにいち早く気づいたホテルやキャンプ場が勝ちだ。
 孤独な (というか、逃げ出してきた) 男たちが、独りでいることを楽しんだり、あるいは独り者同士が声を掛けあうスペースを持っている施設は伸びる。

 ・コールマンのヴィンテージアイテムなどを集めた、趣味語りの場を設けたキャンプ場
 ・真空管アンプとレコード針で音を聞かせるオーディオルームを備えたペンション …etc.
 
 つまり、「女はこういう趣味が分からないですねぇ」 (苦笑い)
 という、独り者たちが、お互いに卑屈にならなくてすむ程度のちょっとハイブローなテイストは、そういう施設には必要だ。
 ハタから見て、「一人旅も悪くないな…」 と思わせる情景をつくってあげないと、ハニカミ屋のオヤジたちは寄り付かない。
 
 しかし、“お洒落 路線” を煙たがる人たちもいる。
 その場合は、赤ちょうちん、モツ煮込み、ヤキトリ、ホッピー路線もいいかもしれない。
 今のオフィス街から消えた、ノスタルジックな 「ガード下文化」 。
 キャンピングカーを買えるぐらいの年になった男たちは、これがまた、たまらなく懐かしい。
 BGM として、グループサウンズや拓郎、泉谷、かぐや姫をずっと流しておくのもいいんじゃないか?
 
 男は見栄張りだから、「キャンピングカーなのに一人で泊まるのはカッコ悪い」 と思いがち。ファミリーで満杯になっているキャンプ場など、金があっても行きたくはない。
 だから、そういうオヤジたちに、“言い訳” を用意してやれるような施設は伸びるだろう。
 

 
 防音施設付きで、夜通し音楽の聞けるバーを持ったキャンプ場なんていいよねぇ。
 深夜にコルトレーンの 「バラード」 なんかゆったり聞きながらウィスキーが飲めたら、最高じゃない?
 
 
 
 別に夜中までバーテンがいる必要なんかない。自動販売機の酒とコーヒーがあれば十分。
 
 「そういう施設は、自然との調和を大事にするキャンプ場の理念に反する」 なんていう感覚だと、これからはやっていけない。
 少子化の時代。
 キャンプ場だって、宿泊施設として生き残るためには、いつまでもバーベキューをやりに来るファミリーばかりに頼っていられないんだから。
 
 バイクで一人旅する中高年ライダーは自然派志向が強いけれど、キャピングカーオヤジは、そうとばかりは限らない。
 特に、テントキャンプを経験せずにキャンピングカーに乗り始めた人のなかにはアーバン志向の人もいる。
 
 都会を離れると、そういった人々が旅の夜を楽しむ施設がない。
 奥さんに愛想を尽かされ、一人で道の駅に泊まって、コンビニ弁当を食い、テレビを見ているだけじゃ、あまりにも 「独り旅」 は貧しすぎる。
 孤独なキャンピングカーオヤジたちが憩える場所が必要になってくる時代は、すぐそこまで迫っている。
 
 
参考文献 山本馬骨 著 『くるま旅くらしこころえ帳』

関連記事 「小説 ひとり旅同士」 
  
参考記事 「高倉健の存在感」
 
  

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キャンピングカー ひとりのくるま旅 への16件のコメント

  1. ブタイチ より:

    お話を読んでいて
    色んなことが…
    見えてきた!
    そして
    見えてしまった?
    という気がしましたね~。
    すでに寝息をたてている妻の顔をのぞきこんでしまいました(笑)。

  2. 磯部 より:

    若い頃、10代の終わりの記念に、ひとりクルマを走らせて、まだ雪の残る信州に出かけたことがあります。
    で、その夜旅館でなにもやることがなくなってしまい、朝まで寝付けなかったことがあります。
    あれから数十年。
    いまは子育ても終わりに近づき、夫婦のふたり旅を計画している訳ですが、どうもオトコのひとり旅というものには辿り着かないのです。
    前述のように、嫌な思い出があるからとしか思えません。
    トラウマ。
    そうしたことから、オトコのひとり旅ができる先輩方を、大人だなとつくづく私は思うのですが、皆さん夜は一体何をしてらっしゃるのでしょう?
    その辺を聞きたく書込みをした次第ですが、こういう愚問自体が、まだガキなんでしょうね。

  3. 町田 より:

    >ブタイチさん
    そうですか! 見えましたか。
    テヘヘ…ですね。キャンピングカーは、夫婦ゲンカで家を追い出された時に、とても助かる空間です。
    でも、まだそのように使ったことはないんですけどね。
    キャンピングカーの「ふたり旅」を経験するようになって、夫婦ゲンカを避けるコツも身につきましたから。

  4. 町田 より:

    >磯部さん
    何もすることのない“無意味な夜” って、案外豊かな夜のような気もします。
    昔、「全国キャンプ場ガイド」の取材にキャンピングカーを使っていた頃、効率よく回るために、一つのキャンプ場から次のキャンプ場へと、夜通し山の中を走り回っていた時代がありました。
    そうすると、真っ暗闇の石切り場のような所で、やむなく仮眠するようなハメに陥ることもありました。
    窓のカーテンを開けて外を覗いても、明かり一つ見えない闇のまた闇。
    ひたすら車内で酒を飲むしかないのですが、そんなときに聞く音楽は、普段の倍以上に輝いて響いてくるように感じます。
    本を読むと、自分の部屋で読んでいるときより集中できます。
    何もすることのない時間というのは、気持ちの持ち方次第で、豊かな時間に変ることもあります。
    それが独り旅の醍醐味かもしれません。

  5. Yama より:

    二人旅vs一人旅。うーんこの話題は高年者には奥深いと思いますよ。私は3日以上のキャラバンは二人ですが一泊ならよく一人ででかけます。後者ではなんとなく開放感を感じてしまうのですねえ。
    「予も、いづれの年よりか、片雲の風に誘われて、漂泊の思ひやまず。。」(芭蕉)
    この漂泊願望なんか男に特有で、女には理解不能だろうと思うのです。特に、この頃。

  6. 町田 より:

    >Yamaさん
    芭蕉の言葉、いいですねぇ。
    >「漂泊の思ひやまず…」
    女性に理解不能な男の漂泊願望。分かりますねぇ。
    きっと、人類が “村” や “クニ” をつくる前から持っていた男の性 (さが) なんでしょうね。
    昔の歌謡曲のテーマのひとつに、 「漂泊」がありましたよね。小林旭の「さすらい」とか「北帰行」 とか。
    アメリカのカントリー&ウエスタンにも、男の漂泊をテーマにした歌が多いように感じます。
    男には、逃れられないテーマなんでしょうね。l

  7. るー より:

    私は女性ですが、車中泊ひとり旅を若いころからやっていました。
    車以外の旅も、基本は一人が好きですねえ。
    「女性には理解不能」と言われてしまうとちょっとなーと思いますが、いわゆるステレオタイプの女性と行動するのは苦手なので、皆さんのおっしゃることには深く同意します。
    今は独りで子育て中でしてキャンカーで子どもと旅をしていますが、もう少し大きくなって子どもが一緒に遊んでくれなくなったら、またひとり旅ができるとちょっとワクワクしています。

  8. 町田 より:

    >るーさん
    初めまして。コメントありがとうございます。
    >「女性には理解不能な…」 という表現、誠に勝手な先入観に基づいた発言で、申し訳ございませんでした。
    なにぶん、一人旅オヤジはよく会う機会がありますが、一人旅の女性に関するデータというものがなかったもので、勝手な憶測で書いておりました。お許しください。
    ステレオタイプの人々と行動するのが苦手というお気持ちはよく理解できます。それは、相手が男性・女性問わず、そういうことってありますよね。
    「なんで、こんな平凡な景色に、みなと一緒になって“感動” しなきゃならないんだ?」 とか。
    そういうバカバカしさを感じるとき、つくづく自分だけの旅が恋しくなることがありますよね。
    素敵な 「一人旅」 をお楽しみください。

  9. かっち より:

    ナニやら、ボクちゃんのコメントが・・・
    で、男は基本的に一人旅が好きなんですよ。
    現に、今度ノーリードのオヤジ3人(ZIL3とZIL520とKing)集まって秘湯の温泉の混浴(一人じゃド胸が無くては入れない)に行こうってことになってますよ。
    11月の平日ですが、町田さんもどうッすかぁ~
    まいう~のお酒ありますヨ。

  10. 町田 より:

    >カッチさん
    >「ノーリードのオヤジ3人…」
    うん! 言いえて妙ですね。 
    イッヒッヒ、秘湯の混浴! いいですねぇ。
    まいう~のお酒にも、そそられます。
    11月の平日ですか?
    日にちが合えばなぁ…
    11月はちょっと公私ともどもメタ混み状況なので、せっかくのお誘いですが、なかなか日程調整が難しいかも…
    でも、お言葉をかけていただいたことは、とてもうれしいです。
    今度カッチさんの曲に、詞をつけてみたいなぁ。
    なんじゃこりゃ? と怒られそうな気もしますけど。

  11. solocaravan より:

    人間というのは勝手なもので、いつもみなと一緒だと一人になりたくなるし、独りぼっちだと話し相手がほしくなる。他人が煩わしくて一人旅をするはずが、やはり人恋しくなってソロどうしで集ったりする。まったく手に負えませんが、独り者のわたしは選択の余地なくいつも独り旅ではあります。
    ソロでキャラバンなどを引っぱって家族連れで賑わうキャンプ場などにへたに入っていくと注目度120パーセントで困ってしまいます。こちらはただひっそりと人目につかずに過ごしたいというのに。
    設備は最低限でよいのでソロ専用のキャンプ場があればよいです。料金も割高にならないよう工夫してほしいです。大自然のなかのキャンプ場でバー経営というのも西部劇のようで惹かれますね。そこに無法者が現れたりす
    ればドラマが生まれることでしょう。

  12. 町田 より:

    >solocaravanさん
    初めまして。コメントありがとうございます。
    >「大自然のなかのキャンプ場で、バー経営という西部劇的な…」というご発言。
    もしかしたら、私ぐらいの、往年の西部劇をよくご存知の世代でしょうか。その雰囲気、とてもよく分かるんです。
    >「無法者が現れたりすればドラマも…」という設定を思いつかれるのも、西部劇のエッセンスを心得ている方のご発言とお見受けしました。
    アメリカ映画から西部的というジャンルが消えてしまいましたが、私などのイメージするアウトドアというは、どこかで、昔観た西部劇と結びついています。solocarvanさんのイメージにもそういうのがあるような気がしました。
    間違っていたら御免なさい。
    オヤジ一人で、ファミリーに溢れたキャンプ場に泊まって気まずい思いをした経験というのは、私にもあります。
    ソロで楽しめるキャンカー乗りの場というものも欲しいですよね。

  13. solocaravan より:

    私は東京オリンピックの年の生まれなので町田さんとはたぶん世代が異なると思います。映画はあまり見ませんが、こないだたまたま見た「真昼の決闘」のテーマソングがなぜか耳に焼きついています。
    うちの近所には田んぼのまん真ん中にウェスタンバーがあったりしてそれのイメージからキャンプ場にバーがあってもわるくないなあと思ったわけです。私は自作オーディオマニアなので、ハイファイ喫茶やハイファイバーのあるキャンプ場なんかもあったら面白いだろうと思っています。

  14. 町田 より:

    >solocaravanさん
    そうでしたか。東京オリンピックの年の生まれ。
    これは失礼いたしました。
    でも、「真昼の決闘」はいい映画ですね。保安官のゲーリー・クーパー、しぶいです! テーマソングは「HighNoon」ですね。
    ハイファイ喫茶、ハイファイバー、いいですねぇ。
    やっぱり音を楽しめるキャンプ場って欲しいです。
    でも、キャンプ場は、原則的に「夜は静かに」ですからね。
    これからは、そぉっと独りの夜を楽しみたいキャンパーも出てくるような気もしますので、そこを何とかしてほしいという気分はあるんですけどね。
    solocaravanさんの意見に一票!

  15. 月兎 より:

    ウ~ン。
    見栄っ張りの男性キャンパー諸氏。
    張りすぎたら、今度は適当に独りでの空間を楽しむ。
    独りがよくって出かけた彼等。
    気が合いそう、話が合いそうな他のキャンパーと出会ったら、
    独り旅の夜ながらこそ共に時間を過しましょう、という事ですか。
    いいですねぇ~。

    以下に張ったのは、出前 RV・ラウンジ&バー/キャバレー。
    静かなキャンプ場に出向いて、夜のしじまを妨害するようなことはないようですね。
    日本全国で開催されるRV展示会場に乗り付けたら楽しそう。
    このリンクの場所、サン・フランシスコはミッションストリートでしょう。
    夜毎ストリート・パーティーに出くわす、オネー達の聖地です。
    観光客もそれを目当てにしてミッション・ストリートに集まります。
    東京でいえば新宿2丁目ですか?

    http://cc.bingj.com/cache.aspx?q=RV+lounge+%26+bar&d=4596436548914608&mkt=en-US&setlang=en-US&w=AcTdyCIWOpAqN_5-5n2pRdaS0hObI_TS

    • 町田 より:

      >月兎さん、ようこそ
      いやぁ、これは凄いゾ~ !!
      満艦飾のイルミエーションでカスタマイズされたRV。
      中が、バンド入りのバーラウンジになっているわけですね。
      場所は、「オネーたちの聖地」 。
      興味がつのりますね。

      カラオケも歌えるようだし、こういうRVがあれば、日本のキャンプシーンももった楽しくなりますね。
      “男の一人旅” にも彩りが添えられそうですね。

      いつも面白い映像、ありがとうございます。
       

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