1960年制作の映画「アラモ」

《 昔の映画の現代的鑑賞法 歴史編7 》
 
「アラモ」
 
 アラモ。
 この地名はアメリカ人にとっては、「関が原」とか「川中島」、「桶狭間」という単語と同じように、歴史的ヒーローたちがかつて激闘を繰り広げた場所として、誰の脳裏にも刻み込まれている地名らしい。
 今のテキサス州が、かつてメキシコ領だった時代、そこに住んでいたアメリカ系住民が独立戦争を起こし、崩れた教会に立てこもってメキシコ正規軍(写真下)と戦った場所がアラモである。
  

 
 このテーマは、アメリカでは何度か映画化され、最近では2004年に制作されたものもある。
 しかし、ここで紹介するのは、1960年に制作されたジョン・ウェイン監督・主演の「アラモ」だ。
 ま、いちばん有名で、評判も良かったものである。
 
 
 
 実は、子供の頃、これをリアルタイムで見ている。
 スペクタクルシーンの連続で、とにかく興奮のしっぱなし。
 映画が終わって歩き出したとき、頭に血が昇って、足がふらついた記憶がある。
 
 もちろん、最近の CG を多用した戦闘シーンに比べると、その迫力は及ぶべくもない。
 しかし、人的資源を思いっきり投入した映画独特の贅沢感もある。
 それが、かえって現代の映画よりも、今見ると新鮮に感じられる。
 
 
 
 戦闘シーンが延々と続いた映画だったような印象があったが、意外と戦闘に入る前のドラマの方が長い映画だった。
 惜しむらくは、DVD ではカットされている部分があることだ。メキシコ軍が奏でる有名な演奏「皆殺しの歌」が、どこにも挿入されていなかった。
 他にもカットされた部分があるのかもしれない。すごく残念。
 
 映画は、いかにも1960年という時代を物語るつくりになっている。
 太平洋戦争に勝って15年。世界の盟主となったアメリカの自信に溢れた気持ちを、如実に語るような映画だ。
 この頃、まだベトナム戦争は始まっていない。
 ゆえにアメリカは、敗者の惨めさも知らない。
 この映画で描かれるアメリカ人は、陥落することが分かっているアラモ砦に立てこもって、味方の最終的な勝利を疑うことなく、みんな明るく死んでいく。
 
 
 
 戦いを前にして、砦の司令官を務めるトラヴィス大佐は、メキシコの “独裁者” サンタ・アナの暴政を許してはならないと、戦いに参加した義勇兵たちに訴える。
 そして、主人公のデビー・クロケット(ジョン・ウェイン)は、自由のための戦いは、正義のための戦いだとみんなに説く。
 
 当時のアメリカ人の考える「正義」、「自由」、「平等」が無邪気なまでにストレートに語られるのを見るのは、9・11以降のアメリカ人の反応を見た今となってはチトつらい。
 
 そういう意味では、なんともイデオロギッシュな映画なのだが、そのクサい説教を、あっけらかんと明るく言ってのけてしまうのがアメリカ人。
  しかも粋に。
 ジョン・ウェインが説く正義は、(本人は真面目なのかもしれないが)、どこかジョークを言っているような軽さもあって、けっこう許せてしまう。
 
 ストーリーの核となるところは、戦略・戦術の違いをめぐって、正規軍教育を受けたトラヴィス大佐と、民兵出身のジム・ボウイ大佐がことごとく対立するところにある。
 その2人の間に、ジョン・ウェイン演じるデビー・クロケットが割って入り、対立を協調に変えていく。
 最後は、みんな一致団結して戦い、ヒロイックな高揚感と悲壮感の中で死んでいく。
 実に古典的な、男のドラマの定型パターンである。
 
 そういう定型パターンに流れていくのだろうな … というところが、トラヴィスとジム・ボウイが激しく対立しているシーンが映し出されているときに、もう読めてしまう。
 要は、典型的な「予定調和型ストーリー」なのだが、そのような予定調和が、けっこう男の涙腺をゆるめてしまうことまで計算されている。
 
 
 
 まさに、「ドラマはこうつくれば面白くなる」という公理をそのままなぞったような映画で、そういった意味で、この『アラモ』は、観客を予定調和的な感動に導いていくハリウッド的な映画づくりの、代表例かもしれない。
 
 やがてベトナム戦争が始まり、アメリカの正義が徐々に揺らいでいくにしたがって、このような「予定調和的な感動」に欺瞞を感じる声も高まっていく。
 そして、そういう声を背景に、アメリカン・ニューシネマが台頭していく。
 
 もちろん、この映画をつくったときのジョン・ウェインは、それを知るよしもない。
 デビー・クロケットを演じるジョン・ウェインは、アメリカ映画の変貌が足元に迫っていることなど想像することもなく、「正義の伝道師」としての無邪気な笑みを浮かべている。
 その正義が、少し滑稽な、哀しい傲慢さをたたえてものであったとしても、この映画が、1960年代の映画を代表する傑作のひとつであることには変わりない。
 
 

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