ベン・ハー

《 昔の映画の現代的鑑賞法 歴史編5 》
「ベン・ハー」

 
 歴史映画における不滅の金字塔といってもかまわない、ハリウッド製史劇の最高傑作が『ベン・ハー』である。
 シナリオ、映像、キャスト、音楽。
 どれをとっても、他の史劇を完全に凌駕している。
 何度か映画化されたテーマだが、基本的には、ウィリアム・ワイラーが監督を務め、チャールストン・ヘストンが主役に抜擢された1959年の作品にとどめを刺す。

ベ<br />
ンハーDVD

 私は、劇場公開で、この映画を 4回ほど見ている。
 テレビで放映されたものを 2回。ビデオで 1回。DVDで2回。
 さらに、原作の小説も読み、コミック化された漫画も読んだ。
 サントラ盤はレコードを 1枚。CDを 1枚所有している。
 
 CGが全盛となった現在、この映画で実現されたスペクタクルシーンを超えるような映像はごまんとある。
 この映画の模型を使った海戦シーンなどは、今の感覚からすれば、つたなくて見ていられない。
 しかし、奴隷が船を漕ぐガレー船内の緊迫感あふれる映像で、水の上に浮かべた船のお粗末さなど吹き飛んでしまう。

ベン<br />
ハーガレー船

 有名な戦車競争のシーンは、4度目ぐらいに見たときに、撮影車両のタイヤの跡を発見して、興醒めしたことがある。
 しかし、だからといって、あの競技場を埋め尽くす大観衆のボリューム感には、相変わらず圧倒されるばかりだ。
 エキストラに本物の人間を動員するという贅沢感において、これを超える映画は、いまだに登場していない。

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ベンハー競技場
 
 思想的には、キリスト教賛美が強く匂う宗教くさい映画だ。
 日本人は、そのしつこさに、ちょっと辟易するところがあるかもしれない。
 しかし、そんなことはどうでもいいと思わせる面白さが、この映画にはある。
 
 ストーリーは実に、波乱万丈な展開を見せる。
 ジュダ・ベン・ハーというユダヤ貴族の青年が、ローマ帝国への反逆を企てたという無実の罪を負わされ、家族は牢獄に幽閉され、自らは奴隷の身に落とされる。
 彼は、ガレー船の漕ぎ手として、鉄の鎖で船に縛り付けられ、背中をムチで打たれながら、船を漕ぐ人生を送ることになる。
 ところが、マケドニア海賊との海戦で船が沈没したとき、船倉から脱出したベン・ハーは、ひょんなことからローマ海軍の提督の命を救う。
 
 それが縁となって、彼は総督の養子となり、提督の全財産を受け継ぐ身となる。
 不潔で薄暗いガレー船のなかで、奴隷として酷使されていた男が、一夜のうちにローマ貴族の養子となり、ローマ市民の大歓声を浴びて、凱旋パレードの先頭に立つという落差が、観客のアドレナリンの噴出量を高める。

ベン<br />
ハー戦車2
 
 地位と名誉と富を回復した彼は、いよいよ、自分を無実の罪に陥れた相手を求めて、復讐のためにユダヤの地に帰る。
 そして、あの有名な戦車競争のシーンへ …

ベン<br />
ハー戦車競争

 この映画で忘れてならないのは、ミクロス・ローザによる音楽だ。
 特に「ベン・ハー序曲」(テーマ曲)は、いまだにスペクタクル映画のテーマはこうであらねばならないという代表例として挙げることができる。
 他にも、「愛のテーマ」、「ユダヤに還る」、「ローマンマーチ」、「勝利の行進」など、それ自体が独立した曲として聞けるような名曲ばかり。
 私が、大スピーカーの前で、最大ボリュームで聞いてみたいと思うアルバムは、いまだにレッド・ツェッペリンの1枚目と、この「ベン・ハー」のサントラだけなのだ。

▼ ベンハー序曲

    
   

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