アレクサンドル・ネフスキー

 
《 昔の映画の現代的鑑賞法 歴史編 3 》
「アレクサンドル・ネフスキー」

アレク

 
 『アレクサンドル・ネフスキー』 は、巨匠セルゲイ・エイゼシュタインが、1938年に発表した歴史映画。
 物語は13世紀。ロシアに侵略しようとするドイツ騎士団を、ロシアの英雄アレクサンドル・ネフスキー公が叩きのめすという話だ。
 
 スターリン時代につくられた映画らしく、ドイツ騎士団の悪者ぶりが徹底的に描かれている。
 赤ん坊を、悪魔に捧げる生け贄のように、火の中に投げ捨てるなど、ドイツ騎士団の極悪非道ぶりには、ナチスドイツの脅威が投影されていることは明らか。
 しかし、当時、ドイツと 「不可侵条約」 を結んでいたソ連は、1941年までは、その公開を小規模な上映にとどめていたとも聞く。
 
 アレクサンドル・ネフスキーが活躍した時代というのは、ロシアはモンゴルの従属下にあった。
 ネフスキー公は、そのモンゴル政権の保護下において、彼らに協力を誓う形で 「大公」 としての地位を保全してもらった人である。
 しかし、映画では、彼がモンゴルと対等の立場に立っていたように描かれている。

 モンゴルの使者と向き合うネフスキー公は、実に尊大だ。
 それに対し、蒙古側の使者は、白人から見た “アジア人的な卑しさ” をふんだんに漂わしている。そんな描き方で、なんとかロシアの体面を保とうとしていたことが分かる。

 映像そのものは、エイゼシュタインらしさが発揮されていて見応えがある。
 特に、凍結した湖上で戦うシーンなど、馬の疾走感が素晴らしい。
 白い馬具と白マントで身を固めたドイツ騎士団が突撃していくところをずっとローアングルで追い続ける映像などは見事。

 惜しむらくは、そこに被さる音楽が (プロコフィエフなのだが)、小学校の運動会にでも流れていそうな曲に聞こえてしまうこと。
 緊張感あふれるはずの戦闘シーンが、体育祭になってしまう。
 チャンバラのシーンでは、戦士たちが機械仕掛けの人形のように、一定のリズムを保ちながら、単調に剣を振り回している演出にも、時代を感じた。
 まぁ、昔の戦闘シーンというのは、皆このような感じだったが…。
 
 この映画は、40年前に劇場公開された時に見ている。
 冷戦構造の真っ只中で見たときは、ソビエト共産主義の図式的なプロパガンダがけっこう目に付いた。

 すなわち、国を敵に売るような卑怯な大商人 (資本家) が登場し、
 勇気ある農民たち (労働者) がそれに反発して、英雄 (党) を担ぎ出す。

 英雄 (党) は大衆の先頭に立って、大商人たちを駆逐し、
 侵略者たち (資本主義諸国) から国を守る。

 実に分かりやすい 「共産主義革命」 の寓意になっている。
 
 しかし、今回DVDで見ると、政治的プロパガンダの匂いはあっても、それを 「くさい」 とは感じなかった。
 共産主義が歴史として、過去のものとなり、それを成立させていた背景も崩壊したからだろう。
 いつの間にか、ポスト冷戦時代の感性に染まっていた自分に気づく。
 
 

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アレクサンドル・ネフスキー への2件のコメント

  1. 月兎  より:

    Mr.Machida
    記憶が曖昧なのですが、確か15年ほど前?
    場所はサンフラン・シスコ シンフォニー・ホールで
    時の指揮者ヘルベルト・ブロムシュテット指揮による
    このサイレント・ムービー ” アレクサンドル・ネフスキー” 
    上映と生演奏で観賞しました。
    満席のシンフォニー・ホール。
    やはり凍結した湖上での戦いシーンは圧巻でした。
    時として各地のメジャー・シンフォニーではこれを演目しているようです。

    もう一つお邪魔です。

    http://www.youtube.com/watch?v=rbCciVSfu1A

    このコメント 一瞥頂いた後にはボツになさって下さい。
    サミー

    • 町田 より:

      >月兎さん、ようこそ
      「アレクサンドル・ネフスキー」 のサイレント・ムービーが今もアメリカで上映されているなんて知りませんでした。なんといっても、第二次大戦の時代の1938年の映画ですからね。
      やはり、エイぜシュティン監督の魅力なのでしょうか。音楽はプロコフィエフだし。
      当時のソ連芸術の粋を集めた映画だったのかもしれませんね。

      確かに、凍結した湖上の戦いのシーン、素晴らしかったです。
      サミーさんと、こんな話題も共有できて幸せです。

      YOUTUBEの画像も興味深いものでした。
      コメントありがとうございます。
       

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