キングアーサー

昔の映画の現代的鑑賞法 歴史編 1
 
 古代ギリシャ・ローマの話、中世の騎士物語、日本の戦国ドラマや、アメリカの西部劇。
 基本的に、馬がたくさん出てくる映画が好きです。
 たまに用事のない休日などに、それらを眺めては、馬の走るシーンを堪能しています。
 
 そこで、ブログネタがないときなど、その感想をつづってみたいと思うようになりました。
 もうまったく個人の趣味の話なので、興味をお持ちでない方は、この企画が出てきたときは、飛ばしてお読みくださいませ。
 ちなみに、原則的にすべてネタバレです。最後のドンデン返しがある映画でもネタバレで進めますから、ご注意を。
 
キングアーサー (2004年アメリカ映画)
  
 アーサー王と円卓の騎士。
 西欧人には、とてもなじみ深いテーマで、昔から何度も映画化されている。 『キャメロット』、『エクスカリバー』 などが有名だ。
 

 
 今回採り上げたのは、2004年制作のもの。
 ネットのレビューなど読むと、「面白くない」 という批評もあって、さほどの期待もなく DVD を見始めたが、近年の歴史モノのなかでは、『トロイ』 や 『キングダム・オブ・ヘブン』 より面白かった。
 
 なにしろ、設定が意表を突いている。
 前代未聞の新解釈なのだ。
 
えっ! アーサーってローマ人?
 
 「アーサー王」 といえば、長らく中世の人間だと思われていたが、この映画で描かれるアーサー王は、ローマ時代の人間であり、ローマ帝国からブリテン島の警護を任された 「ローマ軍の指揮官」 なのだという。
 従ってアーサーは、ローマ軍将校のような甲冑に身を固めて登場する。
 
 最初ポスターや CM 画像を見たとき、このローマンスタイルのアーサー王にはものすごい違和感を感じた。
 しかし、映画制作者に言わせると、
 「アーサー王伝説は、紀元1500年頃に成立したと思われがちだが、実際は、それより1000年も古い話だという証拠が出てきた」
 とのこと。
 「この映画で描いたことの方が真実に近い」
 と自信たっぷりの様子。
 
 ホントかしら? 
 と思いつつも、その説には、無性に好奇心がそそられてしまう。
 まず、「アーサー王は、ローマ人の父と、ブリテン人の母を持つ混血児だった」
 と、この映画は述べる。
 父は、れっきとしたローマ貴族だったが、母がブリテン人のため、アーサーは、「ローマの教養」 と 「ブリテンの武勇」 の両方を理解する人間として成長していく。
 
 ところが、ブリテン人はみな教養の低い野蛮人。
 それに物足りなさを感じる青年アーサーは、その対極にある 「教養人の都」 としてのローマにますます憬れを抱くようになる。
 しかし、実際にローマ帝国から派遣されてくる司教や貴族たちは、みな尊大で、現地人に対する差別意識が強く、狡猾で、残忍。
 彼らは、ブリテン人を人間とは思わぬような扱いをして、アーサーを失望させる。
 
 ここで描かれるローマは、図式的にいえば、
 「古い権威」
 「硬直した秩序」
 「抑圧」 の象徴であり、
 
 それに対するブリテンは、
 「新興勢力」
 「自由と平等」
 「人間愛」
 を象徴している。実に、分かりやすい。
 
 アーサーは、数々のローマ人と実際に会った結果、自分が心に描いていたローマは、すでに存在していないことを知る。
 しかし、それでもまだ、父が愛していたローマに対する忠誠心も捨てることができない。
 
 悩むアーサー。
 ローマ軍の守備隊長であるアーサーが、ローマを捨て、ブリテン王として独立する日が来るのか?
 そこらへんが見所となる映画だ。
 
円卓の騎士の秘密
 
 ブリテン島を守るローマ軍の隊長である若きアーサーには、彼につき従う忠実な部下たちがいた。
 有名な 「円卓の騎士」 たちだが、彼らはローマ人でも、ブリテン人でもなかった。
 なんと、黒海北岸に暮らすアジア系の遊牧民 (サルマタイ人) だというのである。
 
 実際に、5 世紀頃のイギリスに駐屯していたローマ兵のなかには、ヨーロッパ東部から中央アジアにかけて遊牧していた民族が組み込まれていたという文献や考古学的資料が発見されたらしい。
 しかし、それがアーサー王の円卓の騎士たちだとは!
 前代未聞の仰天解釈のひとつだろう。
 
 映画のなかでは、「憂愁の美剣士」 であるはずのトリスタンが、アジア顔で登場し、モンゴル騎兵のような甲冑をつけ、ヨーロッパの直刀ではなく、アジア遊牧民の湾刀を持って戦っている。
 その隣りには、ローマ軍人の甲冑をまとったアーサーが並ぶ。
 トリスタンがアジア騎兵だなんて…。
 カルチャーショックで頭がくらくらしそうな設定だ。
 
 「円卓の騎士たちがサルマタイ人である理由ははっきりしている」
 と、映画制作者は言いたげだ。
 歩兵中心の戦いが繰り広げられていた古代の北ヨーロッパには、元来、騎馬戦術の伝統がなかった。
 にもかかわらず騎士 (ナイト) と呼ばれる戦士団が誕生したのは、騎馬民族の伝統が注入されたからだ … と。
 
 さらに、5 世紀頃のブリテン島には、このような異民族の戦士たちを束ねていた隊長に 「アウストゥーリア」 (ラテン読み) という人物がいて、それをイギリス風に言い直せば 「アーサー」 になると。
 
 う~ん…
 真偽のほどは分からないが、源義経がジンギスカンになったという話よりは、少しは信憑性が高そうにも思える。
 
 彼らは、もとが騎馬戦士なのだから、乗馬術に長けているだけでなく、馬上で弓を射るのも巧み。
 剣を振りかざして突進すれば、その破壊力はすさまじく、敵が反撃に出れば、身をひるがえして遁走するのも上手。
 相手が歩兵だけならば、5~6 騎だけで、その10倍以上の敵を翻弄してしまう。
 ヨーロッパにおける 「騎士」 はこうして生まれた。
 … という映画なのである。
 
評価は様々
 
 というわけで、非常に楽しめた作品だったが、なぜかネットの風評などを拾っていくと、意外と冷めた評価が多い。
 「話がむずかしすぎて退屈」
 「人の名前が覚えきれない」
 「テーマがはっきりしない」
 自分にとっては、「話は単純。テーマも明快」 な映画なのだが、そうは感じない人もいっぱいいるらしい。
 
 一方、多少歴史好きと思えるような人でも、こう言っている。
 「アーサー王のイメージが狂った。もっとファンタジーっぽいものを期待したが、雰囲気が暗すぎた」
 
 私には、この映画がディズニー風に味付けされた 「おとぎ話の中世」 ではなかったところが面白かったのだけれど、人の感じ方は様々だなぁ…と思う。
 
 もっとも、アーサーを演じたクライブ・オーヴェン自身が地味だという感じもする。
 CM 画像では、ランスロットを演じるヨアン・グリフィズと並んでいたが、どう見ても、ヨアンの方が主人公に見えてしまう。
 映画が進行していくと、クライブの演技力によってアーサーの存在感が強まるようになり、それほど不自然な感じはなくなる。
 それでも、ときどき役所広司の顔とダブってしまう。
 そのときに、『シャル・ウィ・ダンス』 の軽さが漂う。
 もっとも、そう感じるのは、私だけなんだろうけれど。 
 
 

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