吉祥寺ビーバップ (Be Bop)

  
 もう30年以上も前になるだろうか。
 東京・吉祥寺の南口に、「Be-Bop (ビーバップ) 」 という音楽喫茶があった。
 吉祥寺の音楽喫茶文化を語る上では忘れてはならない野口伊織氏が開いた店で、ジャズ喫茶の名門 「FUNKY (ファンキー)」 の 2号店にあたる喫茶店だった。
 なんでも、国分寺の 「ほらがい」 という店に続いて、日本で 2番目に早く登場したロック音楽専門店だという。
 
 ここが、二十歳の頃の私の “たまり場” だった。
 地下 1階と 2階があり、2階はこぎれいなデートスポット用スペース。音も小さく絞って、会話ができるよう
になっている。

 反対に地下は、耳をつんざく轟音が渦巻く、戦場だった。
 当然、独りでヒマな時間をつぶさねばならない私は、地下の戦場へ。

 地下は、意識の尖ったロック信者が集まる魔窟だった。
 ロックの知識と楽器テクニックがないと、地下の方には降りられないという雰囲気が自然にできあがっていて、知らずに入ったお客さんには、ちょっと居づらかったかもしれない。
 
 テーブルも、椅子も、壁も黒一色。わずかに椅子のアクセントとして、赤が入っていたかどうか。
 プレイ中のアルバムジャケットが飾られる棚があったが、そのジャケットすらも、タバコの煙で灰色になった
空気のなかに霞んで見えた。
 
 地下では、ウェイターに飲み物を頼むのも一苦労だった。
 「ホット」
 「アイス」
 などという注文を通すだけでも、巨大スピーカーを揺るがすロバート・プラントの咆哮に負けないくらい絶叫しないと、伝わらない。
 もちろん、会話をするような人間は 1人もいない  (したくてもできない)。
  
 重戦車が地響きを立てるように鳴るウーハー。
 離陸するジェット機のような金属音を奏でるツィーター、コキーター。
 全身の皮膚が震えるような空気の波動を受けて、誰もが目を閉じ、長髪を振り乱して、身体をゆすっていた。
 
 なかには、ギターを持ったつもりになって、アルヴィン・リーのような猛烈な早や弾きを披露しながら、椅子
から仰け反る人もいた。
 今でいうエアギターの元祖である。
 クラプトンのクリーム時代の 「 クロスロード」 などがかかると、席のあちらこちらに、エアギターを奏でるク
ラプトンが何人も登場した。
 
 私は、この店でザ・バンド、サンタナ、CSN&Y などを知った。
 当時は、ヤードバーズ、クリーム、ツェッペリンに至る UK ブルースロックが全盛の時代だったので、カント
リーフレイバーを漂わせるザ・バンドや、ラテンのリズムを刻むサンタナなどは “珍種” だった。
 

 
 しかし、それらの新しい音をつくっていたアーチストたちが、後にメジャーと呼ばれる存在になっていった。
 成功したビッグアーチストたちが、無名時代に世に送り出した最初の音源に、リアルタイムで接する。
 思えば、この時代、私は幸せな体験をしていたことになる。
 
 
 参考記事 「吉祥寺の昔の音楽喫茶」
 
   

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吉祥寺ビーバップ (Be Bop) への4件のコメント

  1. HORI-Bon! より:

     音楽を聞きにいくことは最近ほとんどありません。過去も数えるほどです。こちらには呑みながら生演奏が聞ける店というのがあまりないのでちょっと残念です。雰囲気のいい店があるといいのにと思います。
     10年ほど前、イーグルスが来日して甲子園に聞きに行きました。「ならず者」が大好きだったので、イントロのピアノがなったとたん、ほろほろと来たのを覚えています。他の曲もかっこよかったです~。いつかホテルカリフォルニアを歌いたいのですが、、キーが高くて高くて・・汗
     リチャード・マークスも行きました。震災前の神戸でのライブでした。「ナウ・アンド・フォーエバー」がはやった頃です。力強い歌声にちょっと疲れました。でもよかったですね~
     よく聞いた(今でもたまに聞きますが)のは、ブルーススプリングスティーンやREOスピードワゴン、エアサプライ。あとは、ルーサーバンドロスやベビーフェイスなんかもよく聞きました。
    いやあ~なんかなつかしいですね。英語がへたなので、弾き語りはなかなかできないのですが、歌ってみたくなってきました~

  2. 町田 より:

    HORI-Bon!さん やはり音楽は相当お好きですね。
    お好きなミュージシャンの固有名詞を聞いただけで、HORI-Bon!さんがギターで演奏される音楽のルーツが分かるような気がします。
    私もイーグルスは、初期の頃から聞いていましたし、ブルース・スプリングスティーンはビジュアル的にも、歌詞から見ても、カッコいいな…と感じていました。ルーサー・バンドロスやベビー・フェイスのようなブラック系アーチストもお好きなんですね。さすが幅が広いですねぇ! 
    次のラリーの時は、また素敵な歌をご披露ください。谷口さんも、今度は「ビートルズを完全にマスターする」と張り切っていられるようです。

  3. HORI-Bon! より:

    町田さん、こんばんは。
    音楽は最近また好きになってきました。小学生の頃から好きなのですが、好きの中身が変化してきたというか・・・。最初に買ったレコードはシャネルズのランナウェイでした。ちょうど小学6年くらいにはやって、クラスメイト4人組みがアカペラでやったりしていたのを思い出します。

    その次はよく覚えていないのですが、中学の頃はクラシックやバロックをなぜがよく聞きました。サウンドレコパルという月刊誌を友だちと回し読みしたりして、オーディオにも興味が出てきた頃でした。重量感あふれるレコードプレーヤーや見るからにいい音がしそうなカートリッジを見ながらいつかは・・と思っていました。
     
    結局、お金がなんとかなる頃にはアナログレコードは衰退しておりました。残念です。でもいつかは、JBLのパラゴン(まだあるのかな?)やラックスマンやマッキントッシュなどなど、憧れのオーディオに夢見ました。学生の頃、なんとかお金がたまって、ナカミチのカーオーディオを積んだりもして、音は楽しみました。録音レベルを調整が必要でしたが、カセットテープに録音して聴くのはある意味テクニックが試されるわけで・・それは楽しかったですね~。今はそんな楽しみもありません。
    久しぶりにオーディオもいいですね~
    ノイズがあってもいいので、味わいのある、ほっとする音がそばにほしいですね。

  4. 町田 より:

    HORI-Bon! さん お返事遅くなりまして、ごめんなさい。
    シャネルズの「ランナウェイ」がお好きだったとは!
    実は、あの歌、私もまた自分の結婚式の披露宴で、花婿ながら、来場者の前で、つけヒゲつけてギター弾きながら歌った歌です。思い出深い歌です。
    昔のステレオは、確かにカセットに録音するとき、自分で録音レベルを調整しなければならなかったものでしたね。
    しかし、適当なところでフェイドアウトさせることなども可能だったので、編集テープを作るのは楽でした。
    アナログレコードもいっぱい持っているので、私もまた、レコードプレイヤーをもう一度買い直したいな…と思っているところです。
    ノイズがあっても味わいのある音。
    レコードの音は、本当にそうですね。

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