団塊シニア群像1

 
 「定年退職を迎えた団塊世代」 などという言葉が、マスコミではずいぶん前から飛び交っていたけれど、なかなか、その具体像が私の日常生活にまでは浸透して来なかった。
 
 しかし、最近はようやくそれっぽい “団塊族” が、近辺にも出没するようになった。
 サラリーマンたちが徒党をなしてランチの定食を頬張っているスナックの片隅で、白髪をニット帽で隠し、アウトドアベストなどを着込んで、昼間から悠然と文庫本などを広げて、コーヒーをすすっているような人たちだ。
 
 昼間そういう人たちを見かけると、ついつい、その人が家に戻って寝るまでの時間のつぶし方を想像してしまう。
 
 あの人はこの後、公園などを散歩して、ハトでも見たら、エサをやるのだろうか。
 それとも、繁華街に出て、話題になっている映画でも見るのだろうか。
 日が暮れると、駅前の立ち飲みの居酒屋に顔を出し、夕刊フジなどを読みながら、コップ酒を飲むのだろうか。
 
 さびしくなると、務めていた頃の同僚に携帯電話をかけ、
 「やぁやぁ元気? 今度飲まない?」
 などと誘い合って、決して訪れることのない“今度の日”を確認しあうのだろうか。
 なんだか、うらやましいような、さびしいような。
 
 ある居酒屋のマスターが、カウンター越しの雑談で、こんな話をしてくれた。
 最近、店を開けると、明るいうちから、待ってましたとばかりに飛び込んで来るリタイヤ組のお客さんが増えてきたという。

 「話を聞いていると、身につまされるよ」
  
 どんな話なのか。
 朝、目がさめる。
 家内が寝ているので、ご飯を炊いてやり、おかずもこしらえる。
 寝ている家内を起こして、いっしょに朝食。
 お茶を入れて、新聞を隅から隅まで読む。
  
 その後は、体を動かす意味も込めて、犬を連れて、家の周りや近所を一周。
 最近パソコンを始めたから、かつての同僚たちからメールが届いていないかどうかをチェック。
 
 しかし、同じころ始めた同僚たちは、みな三日坊主で、最初のころ面白がっていたメールのやりとりも、もう
みな飽きた感じ。
 
 今日も、メールは一通もなし。
 パソコンの電源を落として、さぁて何を始めるか…
 と途方にくれるのが、朝の8時なんだよ。
 と、悩みごとを打ち明けるお客さんがいたとか。

 「元気があるのに、やることが見つからない。そういった“不発弾”みたいな中高年がどんどん増えてきたよ」
 居酒屋のマスターは、そういって苦笑い。

 定年後のライフスタイルを模索するようなセミナーでは、
 「定年後の時間をどのように使うか。それを定年前に見つけておくべし」
 などと指導しているという。

 今から趣味などを探しておけということなのだろうが、趣味というのは、さぁ何か持とうと思っても、すぐ持てるものではないというのが、やっかいだ。

 特に、摂待ゴルフや接待マージャンといった、仕事と趣味をセットで考えてきたような人たちは、仲間がいなくなったときに、きっと途方にくれるだろうなぁ…という気がする。
 
 キャンピングカーのクラブイベントなどに招待されて行ってみると、ここでもリタイヤした中高年カップルは日増しに増えている。
 しかし、「退屈で死にそうだ」 などという声はまったく聞かれない。
 
 「新聞を隅から隅まで読んで、やっと朝の8時」
 と悩む人は、キャンピングカーという“生き方”があるということを考えてみるのもいいかもしれない。
  
  

カテゴリー: コラム&エッセイ   パーマリンク

団塊シニア群像1 への4件のコメント

  1. ネアンデルタール より:

    昔、友達どうしでお金を出し合って釣りのための船を持つという話が持ち上がったことがあったけど、リタイア仲間で一台のキャンピングカーを持つ、ということもあっていいのでしょうね。

    僕の周りでは、今のところそういう話は聞かないけど、そんなに暇を持て余しているのなら、女か旅か、もうどちらかしかないでしょう。

    くたびれかけた親父が女にもてようなんて非現実的な雑誌はあれこれ出てきているようだけど、旅の話となると、どこがいいとかここの景色がすばらしいとか、そんなことじゃなく当てもなくどっかに行っちまいたいという衝動はきっとあるのだろうから、そういう衝動を健康的にか知的にか表現してゆくことも、もっと試されてもいい
    んでしょうね。

  2. 磯部 より:

    僕はサラリーマンではないので、テレビなんかでこの手のニュースを見るたびにへぇーという程度にしか分からないのですが、リタイヤした後もなにか考えておかないと憂鬱な毎日が待っているみたいですね。
    町田さんもそろそろ起業して弊社とジョイントしましょう! 楽しい老後が待っているかもよ?

  3. 町田 より:

    >「くたびれかけた親父が女にもてようなんて非現実的な雑誌はあれこれ出てきているけれど…」というネアンデルタールさんの指摘は痛快です! その通りだと思います。
    そういう(雑誌などの)企画はみな確信犯的で、「どうせ、あんたなんかモテないだろうけれど、まぁ、試しにこの腕時計でも買ってみれば?」という、スポンサーとグルになっているところが、何だかなぁ…という感じがしますね。
    なんかの雑誌に、「中高年は決して恋愛を諦めていない」という特集があったように記憶しますが、それも“恋愛は消費を活発にする”という経済原則を煽ろうという魂胆が見えていて、なんだかなぁ…という感じもします。
    でも、「旅」はいいですね!
    「あてもなく、どっかに行っちまいたい」という、日本人の漂泊衝動ですね。ネアンデルタールさんのお仕事にも絡んだテーマで、そちらの方の展開にも期待したいです。

  4. 町田 より:

    >「リタイヤした後の毎日が憂鬱になってしまう」というのは、やはりサラリーマン特有の精神状況なんでしょうね。定時に出社して、定時に帰宅するという人間40年以上慣れ親しんできた習性は、2~3年のスパンで変化させるのは難しいんでしょうね。
    「金曜日の夜、ネクタイを緩めてビールジョッキを傾けることの快感」をサラリーマンは40年味わってきたわけですから、ネクタイが最初からない生活って、やはり最初は、耐えられないのかもしれません。
    私は、もうここ20年ぐらいネクタイをしていないので、ネクタイを緩めるときの快感からも無縁でしたけど。
    磯部さんも同じですよね?

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