これぞトラキャン! (トラックキャンパーの思想)

 
 ピックアップキャビンの本来の名は 「トラックキャンパー」 という。
 日本では、現在キャブコンといわれる車種のことを、かつて習慣的にトラックキャンパーと呼んだため、その混同を避けるために、JRVA (日本RV協会) が1999年にキャンピングカーの呼称を整理し、その時に現在のピックアップキャビンという名称が定められた。
 
 しかし、今でも通は “トラキャン” と呼ぶ。
 実際、トラキャンという響きの方が、このRVの雰囲気をよく伝えている。
 トラックに載せるキャンパー。
 つまりピックアップキャビンは、まずそのベース車たるトラックありきなのだ。
 悪路走破性の高い4WDピックアップトラックに、軽量コンパクトなシェルを積み、過酷な大自然の奥深く分け入っていくというところに、このRVの真骨頂がある。


 
 アメリカでは、ピックアップキャビンは、普通のモーターホームやトレーラーとは一線を画すキャンパーと見なされている。
 モーターホームやトレーラーは、基本的に整地された人工的キャンプ場で使うことを前提としている。それらのキャンプ場では、フルフックアップ設備が行き届いているため、モーターホームなどは、フックアップした状態ではじめて完璧な機能をまっとうするような構造になっている。アメリカン・トレーラーもしかりだ。
 
 しかし、ピックアップキャビンは、基本的にフックアップに頼らないスタイルで発展を遂げた。
 あくまでも脱着を前提に、水タンクやガス関係をシェル内に収め、シェル自体の容量もコンパクトに絞る。
 そのかわり軽量化を押し進め、機動性の良さを追及する。そうやってピックアップキャビンは、ひとつのスタイルを確立してきた。
 
 だから、アメリカではピックアップキャビンは、キャンピングカーというよりサバイバルツールと見なされる。
 自然の中が仕事場であるような狩猟家、森林保護官、釣り師、カメラマン、さらに鳥や虫の自然観測を行う研究家の乗り物なのである。
 ベース車がボンネットトラックであるというのも、そのメンテナンス性を考慮したうえでのことだ。
 
 近年アメリカでは、モーターホーム的に使えるように、装備類を増やした大型のものが普及している。最近は、スライドアウトモデルも相当出回るようになった。
 北米ではピックアップトラックの普及率が高いから、シェルだけ積載してモーターホーム気分を味わおうという人には、ちょうど都合のいいキャンピングカーということになる。
 
 しかし、本来は軽量、コンパクトで機動性に富むことが、ピックアップキャビンの持ち味だといっていい。
 MYSミスティックが扱っているイーグルは、まさにそのピックアップキャビンの精神を最も純化させたモデルである。
 
 ベース車として、どんなサイズのものもチョイスできるというのが、このイーグルの強みで、輸入車ならフルサイズのタンドラから、ミッドサイズのタコマ、フロンティアにまで積載可能だ。
 もちろん国産ミニピックアップのハイラックスなどもOK。
 特に、写真のタコマが、スタイル的にはばっちり決まっている。
 
 それらのベース車の走りを損なわないように、アルミを骨格に使用して設計されたシェル重量は、わずか300㎏。もちろんポップアップルーフによる低重心設計で走行安定性も確保。
 全長3100mm。全幅1760mm。ポップアップをたたんだ時の全高は、約1360mm。ベース車のサイズとほとんど変わらない。
 だから走っているときは、山奥に分け入っても、飛び出した岩や、木の枝をまったく気にすることがない。渓流釣りや野鳥観察にはもってこいのビークルである。
 
 室内はあっけないほどシンプルだ。
 目立つ家具といえば、2バーナーコンロとステンレスシンク、ダイネットテーブルと冷蔵庫。あとはシート、バンクベッドがあるのみ。
 色目も、キッチン類の白の天板とブルーのシート、そして薄い茶系の家具の3色だけ。お茶漬けのようなあっさり感だ。
 そのかわり、ベッドは広い。
 バンクベッドは1950×1670mm。フロアベッドも1830×860mmを確保している。
 食べて、寝る。
 男の仕事場だ。
 
 
 
 ヘミングウェイが生きていたら、きっとこのイーグルのようなピックアップキャビンを好んだだろう。
 文明から遠く離れた環境にいるときに、はじめて自分のくつろぎを見出したあの男は、釣りや狩猟を楽しんだ午後は、ダイキリでも飲みながら、この簡素なテーブルに向かって執筆をしたかもしれない。
 
 ピックアップキャビンにはそういう知的な匂いがある。
 シンプルがゆえに、ユーザーがアウトドアを生き抜くためには、智恵をしぼって、さまざまな工夫を凝らさね
ばならない。
 ピックアップキャビンは、それをユーザーに求めている。
 人間の精神活動を活発にさせるという意味で、この手の乗り物は知的なのである。
 
 

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これぞトラキャン! (トラックキャンパーの思想) への2件のコメント

  1. pirppirp455 より:

    ミスティックのHPから彷徨ってきました。イーグルはいいけど、あの会社の製品は割高なんです。というわけでずうっと躊躇していましたが、足掛け5年間お世話になったJ-Cabinと5年落ちのTREK(変なスペルですが)とを載せ代えました。トレックにはベンチすら付いていなかったので、最低限の装備は付けましたが、それでも普通のキャンパーから見れば裸同然でしょう。しかし、これはいいです。林道でも高速道でも最高。これから厳冬期の山の中での使い勝手を試す季節です。

  2. 町田 より:

    >pirppirp455さん
    ようこそおいでくださいました。
    最近のアメリカのピックアップキャビンは大型化していて、スライドアウト機構すら付いているという話ですが、やっぱり機動力ということを考えると、トレックやイーグルのような機種が、一番ピックアップキャビンらしいという気がしないでもありません。
    pirpprrp455さんがおっしゃるように、>「林道でも高速道でも最高」…という気分、よく分かります。自分もこういう機種に憬れのようなものを持ちます。
    厳冬期の山の中での使い勝手。どのような感じであったが、またレポートなどもお寄せください。

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