エアストリーム話

 
 「キャンピングカーはスタイリングよりも機能が大事。格好にこだわるキャンピングカーは価値が低い」
 ユーザーのなかには、そのように信じている人がいる。
 しかし、スタイリングそのものが機能と一体となり、両者を切り離すことなどできないという幸せなキャンピングカーがある。
 エアストリームというトレーラーだ。
 
 ボディの素材にアルミを使って耐久性を高めながら、軽量化を実現し、ラウンドフォルムを採用して空力性能を向上させるなど、エアストリームのボディ設計は、キャンピングカーとしての機能を合理的に追及したことによって生まれた。
 
 しかし、そのために実現されたボディフォルムは、工業製品というよりはアートに近い造形美を持つことになった。

 エアストリームがハイウェイを疾走していくのを見ると、おそらく誰もがそのボディからオーラのようなものが発信されてくるのを感じるはずだ。
 エアストリームの故郷アメリカでも、このボディフォルムに特別な感情を抱く人は多い。
 ユニークなスタイルを持つキャンピングカーは他にもいろいろありながら、アメリカのメディアに採りあげられた頻度は、エアストリームがいちばん高いといわれている。

 エアストリームの銀色のラウンドフォルムはキャンピングカーでは珍しいものだが、それが何に由来するのか知らない人も多い。
 
 エアストリームデザインの原点は、大空を飛翔する航空機である。
 同車の創始者であるワーリー・バイアムが、1930年に広告業界から身を転じてトレーラーの製作を始めたとき、新しいトレーラーのスタイルを模索して、試行錯誤を繰り返すなかでひらめいたのが、アルミ素材を使った航空機だった。
 
 当時、風洞実験の結果もっとも空気抵抗が少ないといわれていたのが、航空機に代表される流線型スタイルだったのである。
 もちろんワーリー・バイアムが参考にした航空機は、1930年代のもので、現在の最先端旅客機などとはおよそ形態が異なる。
 しかし、リベット打ちされたアルミニュームで被われた同車のクラシカルなフォルムは、現代ではむしろ神々しくさえ映る。
 
 エアストリームはまず工法からして、他のトレーラーとは根本的に異なっている。
 一般的なトレーラーの工法では、まず床の上に家具を載せ、内装を仕上げてからパネルで周囲を囲み、天井にルーフを被せていく。
 製作する側からすれば、この方が作業が楽でコストも安い。
 しかし、その場合は、家具類の取り替えや大々的な補修が必要になったときに、その持ち出しができない。
 家具がボディを支える補強材として使われ、壁に貼り付けられているからだ。
 
 そのように造られているトレーラーは、家具の寿命が尽きたときにボディの寿命も尽きてしまうことになる。
 エアストリームでは、家具の取り外しが自由にできるように、調度品や電化製品は、すべてボディが完成してから組み込まれる。簡単にビス止めされているだけだから、補修や交換を行うときに車外に持ち出すのも楽だ。
 
 同車の場合は、ボディが堅牢なので、家具だけ新品のものに替えれば、さらに40年、50年と使い続けることができる。
 
エアストリーム内装_クラシック
 
 エアストリームのボディは、また内壁、外壁とも木材が使われていないので、結露や室内にこもった湿気による木の腐食からくる経年変化にも強い。
 同車にはエンジン付きのモーターホームもあるが、概してトレーラーの方に人気が傾くのは、やはり耐久性が異なるからである。
 エンジン付きのモーターホームは、ボディよりも先にエンジンが持たなくなってしまうからだ。
 普通の乗用車とは逆であるところが面白い。

 近未来的な流線型ボディに比べ、エアストリームのインテリアはずっと変わらないオーソドックスなアーリーアメリカンスタイルを取りつづけてきた。それがオーナーの大多数を形成する60代~70代の老夫婦に好まれていたからだ。

 彼らは、芝生に水を撒きながら、ホワイトペイントの柵越しに、隣りの夫婦とトウモロコシの収穫高を語り合い、夜は夫婦で野球を見ながら、イチローやマツイのことではなく、ジョー・ディマジオの思い出話を語る。
 
 そんなアメリカのシニア夫婦の生活感覚に合ったインテリアでよかった時代が長かった。
 しかし、2002年にインターナショナル(特にCCD)という新しい機種が登場してから、その内装はガラっと変わった。
 アルミで被われた外装と同じく、内装にもアルミパネルが使われ、コーナー部にアールを付けたラウンド家具が用いられるようになった。
 ナチュラルな温かみを持った大草原のコテージが、一気に宇宙ステーションに変わったようなものだ。
 でも、それも現代的で実にいい。
 
エアストリーム内装_CCD

  エアストリームがもっと増えれば、日本の風景も変わっていくだろう。
 せせこましい電信柱と混みあったビルに埋もれた日本の景色に、大陸的なおおらかさが付加されるような気がする。
 風景を変えるキャンピングカー。
 そういう力を持つクルマは、現在このエアストリームしかないようにも思う。
 
 

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エアストリーム話 への7件のコメント

  1. TJ より:

    町田編集長~エアストリームはアートです!!アメリカの家に行っているとハイウェイなどで見ると、現在型のキャンピングとは違う大陸的大らかさがなんとも言えない雰囲気であります。

  2. 町田 より:

    TJさん 初めまして。
    TJさんにお越しいただけるなんて、光栄です。TJさんの書かれる記事は、専門的に突っ込んだものでも、実に面白く読ませるワザがあって、いつも素敵だなぁ、と思っていました。
    これからもよろしくご指導ください。

  3. TJ より:

    すみません二重投稿になっていました。エアーストリームまでいかなくても日本でも団塊の世代にキャンピング
    カーで日本中を縦断する方々が増えて、さらにキャンピングカーで世界を回るようになったら素敵ですよね!!

  4. 町田 より:

    TJさん 二重投稿などお気遣いなく。一応ダブったものは整理させていただきました。
    >キャンピングカーで世界を回る…。
    いいですねぇ!
    そのうち自分もそうしたいと思っているんです。
    自分も団塊世代の末席にいるもので、定年退職が目に見える位置まで迫ってきました。退職後には一度レンタル
    モーターホームでも借りて、ブツブツに途切れたルート66の一部など走ってみたいと思っているんです。ジョー
    ジ・マハリスの歌など聞きながら…

  5. こんなキャンピングカーに宿泊してみませんか!

      今日も気持ちの良い青空の一日でした。
    ここカナダは日本では馴染みの薄いキャンピングカーが、とても一般的に利用されています。ここカナディアンロッキーはキャンピングのメッカでもあり、カナダ全国は元よりアメリカ全国やメキシコや遠くはヨーロッパから船で運んで来て大自然のキャンピングを楽しんでいます。すでに沢山のキャンピングカーを毎日それは沢山姿を見ることが出来ます。
    弊社ではキャンピングカーも

  6. A・T より:

    はじめまして、1961年型エアストリームバンビでキャンプを楽しんでいるA・Tと申します。
    町田編集長の記事、エアストリームの魅力を端的に表現されており、嬉しく読ませていただきました。まさにアート!(現に今春、1963BAMBIがMoMAのコレクションとして収蔵されました)なエアストリームはもっと多くの人に楽しんでもらいたいですし、ぜひヴィンテージの良さも知っていただきたいと思います。
    今後も楽しみにしておりますのでよろしくお願いします。

  7. 町田 より:

    >A・Tさん
    こちらこそ、はじめまして。
    ヴィンテージ・バンビ、画像も拝見しました。
    美しいですね! 素敵なエアストリームライフを楽しんでいられることが、よく伝わってきます。
    MoMAの話は初めて知りました。まさに、文字どおり「アート」になったわけですね!
    有益な情報、ありがとうございます。
    これからも、よろしくお願い申しあげます。

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